常用漢字から消えた五文字 第5章
第4章では、交ぜ書きを減らすなどの追加理由を見ました。この章では、常用漢字表が禁止の名簿なのか目安なのか、という表の性格を見ていきます。
告示の前書きと答申、内閣訓令の文言を突き合わせます。名簿に入った字の理由を見たあとに、表そのものの立ち位置を確かめる、という順になります。禁止なのか目安なのかを、出典の文言で分けて一つずつ追います。字数や例外の入場は第1章と第3章で見たとおりです。
告示PDFの前書きは、この表を一般の社会生活での漢字使用の目安だと書いています。法令や公用文書、新聞・雑誌・放送など、現代の国語を書き表す場合が対象として並びます。
科学・技術・芸術などの専門分野や、個人の表記にまで広げようとするものではない、ともあります。過去の著作や文書の漢字の使い方を否定するものではない、という項もあります。運用では、個々の事情に応じた適切な考慮の余地がある、というのが前書きに示された立て方の締めです。
文化審議会の「改定常用漢字表」答申も、制限的なものではないと書いています。一般の社会生活での漢字使用の目安を目指すものであるから、表にある漢字だけで書かなければならないわけではない。
必要に応じ、振り仮名などで読み方を示す配慮をしたうえで、表にない漢字を用いることもできる、とあります。国立国語研究所のことば研究館は、常用漢字表にない漢字を禁じようとするものではない、と整理しています。答申とことば研究館が、同じ方向の文言を並べて示している、という事実の照合になります。
一方で、公用文の扱いは別です。内閣訓令「公用文における漢字使用等について」は、各行政機関が作る公用文の漢字使用を常用漢字表の本表及び付表によるものとする、と別紙の1(1)で定めています。
本表及び付表には表の見方及び使い方を含むとし、字体は通用字体を使うものとする、とも一文が続きます。告示の前書きが「目安」と書くのに対し、訓令は「による」と書きます。
一般の社会生活では目安として示され、各行政機関の公用文では訓令でその表による、という二つの顔の並びとして見えます。
新聞については、ことば研究館が常用漢字表を土台に各社独自の基準を作る、と整理しています。協会や各社の個別の字の足し引きまでは、ここでは断定しません。ことば研究館の紹介として短く触れる範囲にとどめます。
公用文やビジネス文書の言葉は、敬語の本でも扱っています。個人の日記まで縛る禁止の名簿ではなく、公用文では訓令で表による、という二つの顔の対比がここまでの照合です。
次の章では、同じ改定でも字ごとに扱いが分かれた例を見ていきます。
参考:文化庁「常用漢字表」PDF前書き/内閣訓令「公用文における漢字使用等について」/国立国語研究所ことば研究館/文化審議会「改定常用漢字表」答申
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