新しい元号は午前中に決まる 第1章
元号は千四百年近く続く、と語られがちで、内閣総理大臣談話でも長い歴史を紡いできた、と触れています。年の呼び方としての歴史は確かに長く、生活のなかの年号の感覚も古く感じやすいです。古くからある制度だと思いやすい一方で、いまの決め方を書いた法律そのものは、それほど古くありません。元号法は昭和五十四年法律第四十三号で、公布と施行は昭和五十四年六月十二日です。西暦に直すと一九七九年で、五十年足らず前の法律です。
条文の本則は二項だけです。第一項は、元号を政令で定める、とあります。第二項は、皇位の継承があったときに限って改める、とあります。長い歴史の制度でも、いまの法的な骨格は短い二文に収まっています。名前をどう決めるかと、いつ改めるかの二点だけが本則に置かれ、細則や候補の条件はこの法律の本文にはなく、読むとすぐに終わる長さです。
附則も短いです。公布の日から施行するとあり、公布日と施行日は同じ六月十二日です。すでに使われていた昭和の元号は、本則第一項に基づいて定められたものとして扱われます。新しい法律の枠に既存の元号を載せるつなぎ方で、法律ができたあとに昭和が始まったわけではありません。先にあった昭和を、この法律の第一項の下に位置づけています。
六月にできたのは法律の骨格です。候補の整理や意見聴取の手順は、同年十月二十三日の閣議報告にまとまります。法律の本文は二項のままで、手続の細部は別の文書に置かれています。いまの決め方の土台はまずこの短い法律にあり、法律が先で手続の文書が同じ年の秋に続きます。
内閣府のページでも、元号法は昭和五十四年法律第四十三号として掲げられ、同じ二項と附則が並びます。元号法に関する事務は、大臣官房総務課が所掌します。平成への改元では昭和六十四年政令第一号が、令和への改元では平成三十一年政令第百四十三号が、いずれも元号法第一項の規定に基づいて定められました。いま使っている元号もこの短い法律の第一項を経由しており、古い年号の記憶と、いまの法的な根拠は別物です。日本法令索引でも、公布の日は六月十二日です。
思ったより新しい、と感じる理由はここにあります。元号という呼び方や年の数え方の歴史は長くても、いまの法律の言葉は昭和五十四年にできました。伝統の長さと、法律としての新しさは別の話です。短い二項の法律が改元のときの土台になり、千四百年の語りと一九七九年の法律は同じ題材でも層が違います。年号の古さと決め方の法律の新しさは同じ制度のなかでずれており、長さの印象と法律の日付は一致しません。
次の章では、いつ改めるかを定めた第二項を見ていきます。
参考:e-Gov「元号法」/内閣府「元号について」/日本法令索引/首相官邸「元号選定手続について」
次の章:改めるのは皇位継承のときだけ