オトスミ文庫
数分で読める、ひねりの効いた超短編
九階までしかないマンションで、夜ごと「10」のボタンが一瞬だけ灯る。管理会社は「付いていない」と言う。私は確かめるため、開ボタンを押した。
毎朝六時四十分に、わたしは商店街の一日が始まる音を聞く。来月、その通りの屋根がなくなると決まった。
天気を一日だけ決められる権利が町内の久世さんに当たった。頼みごとは四つあって、締切は夜の十一時だった。
共用廊下に物を置いてはならない。置かれた物は管理組合が保管する。条文どおりに動いた書記が、総会の出席者まで預かることになった。
十二軒分の印鑑欄のうち、読んでいるのは私だけだった。三年目の班長が、回覧板の末尾に一文を足してみた。
遅刻の言い訳が見事すぎて誰も反論できない岡部が、初めて本当の理由で遅れた。あまりに突飛で、誰ひとり信じなかった。
朝、目覚まし時計を止めて「あと五分」と思った瞬間、僕は不思議な国に迷いこんだ。そこでは全員が「あと五分」を探していた。
資産家の老人が遺した、世界でいちばん短い遺言。集まった親族たちは、弁護士が読み上げた一行に息をのんだ。
いつも時間どおりにしか鳴らなかった目覚まし時計が、ある朝から、持ち主が「本当に起きたい時間」に鳴り出した。
言葉をつなぐことで続いてきた、しりとりの王国。「ん」で終わる言葉を言った者は追放される。新しい王様が決めた、ひとつの特別なルールとは。