しりとりの王国

言葉が鎖のようにつながっていく空想の小さな王国。丘の上のお城と、空に鎖のように連なる雲。

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むかしむかし、あるところに、しりとりの王国がありました。

この国では、王様も家来も町の人たちも、みんなしりとりで話をします。「おはよう」と言われたら「うみがきれい」と返し、「いい天気」と言われたら「きょうもげんき」と返す。言葉が鎖のようにぐるぐるとつながっていくのです。ただし、この国にはひとつだけ厳しい決まりがありました。

「ん」で終わる言葉を言った者は、国の外へ追放される。

*

そのせいで、国の人たちはいつもびくびくしていました。うっかり「みかん」と言えば追放です。「りんご」も「れもん」も「ほん」もいけません。町の人たちは、言葉の最後をよく考えてから話すようになりました。

ある年、王様が亡くなって、若い王様が即位しました。新しい王様は、少し変わった人でした。最初の演説で、王様はこう言いました。

「みなさん、きょうから新しいルールをひとつ作ります」

町の人たちは息をのみました。「ん」で終わる言葉に、追放よりも重い罰が加わるのでしょうか。王様はにっこり笑って続けました。

「『ん』で終わる言葉を言った者は、追放しません。かわりに、みんなで拍手して励まします」

*

広場がしんと静まったあと、ざわめきが広がりました。

「そんな。追放しないなんて」

「しりとりはどうなるの」

王様はうなずきました。

「しりとりは、勝つことだけが目的ではありません。言葉をつなぐことが目的です。『ん』で終わったら、そこからまた始めればいいのです」

最初に「ん」で終わる言葉を言ってしまったのは、パン屋のおかみさんでした。

「いらっしゃい。あんぱん、いかが」

広場の人たちは一瞬凍りつき、それからぱち、ぱちと拍手を始めました。おかみさんは顔を赤くして、ぺこりと頭を下げました。

「あらま、まちがえちゃった」

広場じゅうに笑い声が響きました。

*

それから国の人たちは、前よりずっと自由に話すようになりました。まちがえることを、こわがらなくなったからです。しりとりの王国は今でも続いていて、「ん」で終わった者は、みんなに拍手されて「ありがとう」と笑い、また新しい言葉から始めます。

あなたも、今日うっかりまちがえることがあるかもしれません。そんなときは、しりとりの王国の広場の拍手を思い出してください。

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