オトスミ文庫
日常のささやかな謎を解く、やさしいミステリー
席順表どおりに座敷は埋まったのに、課長の席だけが空いたまま乾杯が止まった。幹事の私は座布団と靴の並びから、その理由を探すことにした。
百球のチューリップの球根が、一晩で町内の花壇から消えた。書記の水野は、先月その花壇に入れた土をよく覚えていた。
両親が旅行に出た土曜の昼に帰ると玄関の鍵が開いていた。荒らされた跡はなく麦茶のポットだけが朝より減っている。
月曜の朝、共用冷蔵庫から名前つきのプリンが消えた。総務の矢作さんが犯人探しを始めたが、金曜の夜に残っていた私は何も知らない顔で席に座っている。
毎週月曜、返却ポストに同じ本が届く。貸出記録には誰の名前もない。新人司書の私は、十二冊目を手に取った。
毎晩二十三時きっかりに、上の階から七歩だけ足音がする。気になって調べ始めた私は、郵便受けの中で答えの端を見つけた。
雪の積もった朝、庭に一組の足あとだけが残っていた。玄関から門まで。ただし戻ってきた足あとは、どこにもない。
古書店に持ち込まれた詩集の、ちょうど真ん中のページがきれいに切り取られていた。店主の沙耶は、切り取られた理由をたどっていく。
山あいの小さな温泉旅館には、客室が十二しかない。それなのに宿帳には、毎年一晩だけ、十三番目の客室の予約が入る。
アパートの掲示板に、ある朝、三枚の貼り紙が並んだ。ゴミ出しの注意、落とし物の案内、そして誰にも心当たりのない呼びかけ。