オトスミ文庫
5分から15分で読める、一話完結のオリジナル短編小説
廃止の夜、乗客ゼロで走る最終バス。三十一年「0人」と書き続けた日報の裏で、月見台のドアだけが毎晩ひとり分を数えていた。
金は貸さないが何でも一つ貸すと言われた八っつぁんが、長屋中の持ち物を思い浮かべて迷います。さて何を借りたものやら。
父の一周忌が済んだ翌週、姉と弟は実家の物置を開けた。奥の棚には、紙袋と紐とガムテープの芯が三十年分積んである。
深夜のコンビニに毎晩同じ時刻に来る客は、温かいミルクティーを二本買う。レシートは一枚で、二本目の行き先は決まっていた。
退職届を出した翌週、私は死神の採用面接に来ていた。面接官は履歴書を裏まで確かめてから、机の端に揃えた。
三日降り続いた雨で川は止まり、飛脚の甚吉は宿場で足止めになった。急ぎの書状を抱えた彼は、宿の番頭に心付けを握らせて頼みごとをする。
来週の月曜から七階へ移る私は、金曜の夜に引き継ぎ書を書いている。後任の北村さんに渡す業務は十一項目で、十二項目目だけまだ書けていない。
火星の居住区で、私は夏休みの自由研究に「地球の海の音」を選んだ。聞いて回った相手は五人で、答えは一つも重ならなかった。
祖母の銭湯で番台を手伝う夏休み。客は一日に数人で、扇風機は首が半分しか回らない。右側の籠には、風が一度も当たらない。
町の観測所に着任した陽菜は、毎朝、前任の岡田さんが残したメモのとおりに天気を読み上げている。そのメモは、妙によく当たる。