二時十四分のミルクティー

深夜のコンビニの店内。窓際のイートイン席の二番目の椅子の前のカウンターに、蓋の閉まった温かい飲み物のペットボトルが一本だけ置かれている。外は暗い国道、店内は白い蛍光灯。人物は描かない。商品ラベルや看板に文字は描かない(無地)。

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夜勤を始めて三か月になる。午前二時をすぎると客は途切れて、私は冷蔵ケースの前で飲み物を補充しながら時計が進むのを待つ。国道沿いの店で、その時間帯の店員は私ひとりだった。その客が来るのは、いつも二時十四分だった。レジの打刻がそう残っているのだから、思いちがいではない。

四十代くらいの女性で、灰色のコートを着ている。買うのは温かいミルクティーのペットボトルが二本だけで、袋は断られる。代金はいつもちょうどの額で払うので、釣り銭を出したことは一度もない。レシートは一枚で、品名の行に同じ商品が二行並ぶ。客層キーを押すのは一回きりで、二人分を押したことはなかった。

客は店に入ると、棚へ行く前にまず窓際のイートイン席を見る。それから冷蔵ケースへ向かって、同じ銘柄を二本取る。会計を終えると、一本を手に持ち、もう一本を窓際の席に置いて帰る。入口から数えて二番目の椅子の前で、置くだけで座りはしない。朝の廃棄のときに触ると、蓋は閉まったままで、冷めて常温に戻っていた。

事務所の壁には前任者のメモが貼ってある。「二時十四分 ミルクティー二本 窓際は朝まで触らない」。字は店長のものではなかった。気になって、棚の奥にしまわれたレシートの控えを日付の古い方から繰ってみると、三年分あった。どの夜にも二時十四分の打刻があり、品名はどれも同じ二行で、休んだ日がない。台風の夜にも、正月の夜にもあった。

*

ある夜、私は朝の六時になっても、窓際の一本を片づけなかった。昼の人には「あそこは触らないで」とだけ頼んで帰った。

次の夜も二時十四分に自動ドアが鳴った。客はまず窓際へ目をやった。前の夜の一本が、蓋を閉めたまま同じ椅子の前に立っている。客は冷蔵ケースからミルクティーを一本だけ取り、レジの台に置いた。

「二本ではないんですか」

聞いてしまってから、余計なことを言ったと思った。客は首を横に振っただけで、ちょうどの小銭を台に並べた。渡したレシートの品名は一行だった。

客は一本を手に持ったまま、窓際の席の前を通りすぎて自動ドアを出ていった。その朝も、私は窓際を片づけなかった。レジのジャーナルで前夜の分を見ると、二時十四分、ミルクティー一点、とだけ残っている。

次の夜も、二時十四分は来た。

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