オトスミ文庫
5分から15分で読める、一話完結のオリジナル短編小説
往復で八年かかる星間郵便の手紙。観測基地の若い技師は、返事を待つあいだに、自分がどれほど変わるのかを知る。
江戸の町の提灯屋では、雨の夜だけ、道に迷った人に提灯を貸す。ある晩、提灯を借りた旅の男は、翌朝、見知らぬ包みを置いていった。
亡くなった祖母が遺した古いレシピノートには、分量も手順もほとんど書かれていなかった。孫の美咲は、ノートの余白に隠された、もうひとつの意味に気づく。
突然の雨に駆け込んだ小さな本屋で、店主の老人は客にだけ「いまの気分に合う一冊」を差し出す。傘を忘れた会社員の青木が受け取った本とは。
結婚記念日の夜に夫が毎年作るカレーは、少し辛すぎる。十年目、妻がついに口にした一言から、夫婦の長い秘密が明らかになる。
コンビニの夜勤で、毎晩二時に来る客。受け取られないレシートの裏に、渡辺はそっと一言を書き始める。
使われなくなったはずの海辺のポストに、毎朝一通だけ手紙が入っている。宛名のない手紙を追って、郵便局員の真琴は三つの病院を訪ねた。
引っ越しの荷造りで見つけた、持ち主の分からない合鍵。その行き先には、小さな約束が待っていた。
毎朝、時刻表より三分遅れて来るバス。運転手が毎回口にする挨拶には、わけがあった。
終電の一本前の電車に、毎晩同じ席に置き去りにされる青い傘。持ち主の老人が明かした理由は、少し切なくて温かいものだった。