お金の数字の大半は口座の中にある

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造幣局で作ってもまだお金ではない 第6章

第5章では、貨幣の通用限度を条文と造幣局の説明から確かめました。最終章では、お金の数字の大半がどこにあるのかを、日本銀行のマネタリーベースから見ていきます。

見た目の現金の総額だけでは足りない、というひっくり返しが、この章の軸です。数字の出典は、日本銀行が示す2026年9月の平均残高に置いて読みます。章題の口座の中にある、とは、この統計の内訳のうち日銀当座預金の側を指しています。第3章の流通現金の先に、この内訳のひっくり返しがあります。

2026年9月の平均残高では、マネタリーベースの合計は5,328,464億円、およそ532.8兆円です。内訳のうち日銀当座預金は4,136,678億円、およそ413.7兆円です。全体に占める割合はおよそ77.6%で、約8割に近い大きさです。

一方、日本銀行券発行高と貨幣流通高を足した流通現金はおよそ119.2兆円にとどまります。およそ533兆のうち当座約414兆が大半を占め、流通現金約119兆より大きい、という並びこそが最終章のひっくり返しであり、現金の総額だけではマネタリーベースの中身は読めません。

日銀当座預金は、金融機関が日本銀行に置いている当座の残高です。マネタリーベース統計のFAQでは、主として決済、現金通貨の支払準備、準備預金の三点を役割として挙げています。

家計の普通預金口座そのものではなく、金融機関どうしの決済や現金の支払準備に使われる残高として、公式に位置づけられています。章題が指す口座は、この日銀当座預金の側にあります。財布の現金や家計の通帳とは別の層であり、目に見える現金の外側にある残高の数字なのです。

マネタリーベースは日本銀行が供給する通貨のことです。内訳は、日本銀行券発行高と貨幣流通高と日銀当座預金の合計であり、別名では中央銀行通貨とも呼ばれます。

FAQによると、マネーストックは金融部門全体から経済へ供給される通貨であり、マネタリーベースとは別です。マネタリーベースに入る日銀当座預金や金融部門の手元現金は、マネーストックの側には入りません。家計が使えるお金の統計と中央銀行が供給する通貨の統計は、ここで枠そのものが分かれ、同じ語のお金でも数え方の土台が違うのです。

造幣局で造っても交付まで通貨ではない、という出発点から、お札と硬貨の発行の瞬間の違い、流通現金の総額、貨幣の素材と通用限度までを順に見てきました。第1章から第4章までの道のりです。

何枚造るかは財務省が決め、令和8年度の一円貨幣製造計画は改定後1億3,200万枚です。製造と発行のずれから始めた読みは、統計の内訳のひっくり返しまでで一区切りになります。世の中のお金と呼ばれがちな数字の中にも、流通現金と当座預金という中身の分かれが、公式の内訳として残っています。

お金の数字の大半は、流通現金ではなく口座の中にあります。

参考:日本銀行「マネタリーベース(2026年9月)」/日本銀行「マネタリーベース統計のFAQ」/日本銀行「マネタリーベースの解説」/財務省「令和8年度の貨幣の製造枚数を改定」

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