駅で落とした物は警察まで届かない

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なくした八十三億円と届いた四十五億円 第6章

第5章の終わりで触れた特例施設占有者は、遺失物法第17条に定められています。施設占有者のうち、受け取ったり自分で拾ったりする物がとても多く、それをきちんと保管できる者として政令で定める者が、特例施設占有者にあたります。

特例施設占有者は、持ち主に返せない物について、受け取った日か拾った日から2週間以内に、その物についての事項を警察署長へ届け出ることができます。届け出れば、物そのものを警察に提出しなくてよいとされています。ただし、政令で定める高額な物は除かれます。提出しない場合は、法律の言葉でいう「善良な管理者の注意」を払って自分で保管する義務があります。

警視庁の案内によると、この制度は鉄道やバスの事業者など、落とし物や忘れ物を多く扱う事業者を対象に新しく設けられました。対象は一定の公共交通機関と、東京都公安委員会が指定した施設を占有する者です。

駅などで拾われた物が警察署まで運ばれないことがあるのは、この制度があるためです。警察に届くのは物そのものではなく、その物に関する届け出です。

令和7年の1年間に、警視庁管内で特例施設占有者が保管した物の届け出は329,137件でした。約33万件です。保管金額は7,680,586円で、占有者は21事業者の70施設でした。

これも第1章から見ている警視庁の「遺失物取扱状況(令和7年中)」に載っている数字ですが、拾得届や処理状況とは別の表にまとめられています。

保管された物の内訳では、品目名のある中でかさ類の103,774点がいちばん多くなっています。点数を本数として書くと、約10万本です。続いて衣類履物類が27,407点、電気製品類が8,083点、かばん類が7,214点でした。

貴金属類は2,870点、カメラ眼鏡類は2,037点、証明書類は1,523点です。趣味娯楽用品や生活用品などの「その他」は170,949点で、かさ類より多くなっています。

同じ年に警察が受け付けた拾得届は4,538,244件でした。特例施設占有者の保管は別の表に載っており、二つの数字がどう重なるのかは表からはわかりません。

これまでの章で見てきた数字は、拾得届と処理状況の表から取ったものです。第2章の傘の331,882本も、第3章の証明書類も、第4章の拾った人への引き渡しも、その表の数字です。

特例施設占有者が保管した約10万本の傘や約768万円の保管金額は、それとは別に数えられています。

この本の数字は、すべて警視庁管内の令和7年の公表資料から取りました。現金の開きも、傘が持ち主に戻りにくいことも、東京都のものになった額も、公表された表に表れた範囲の話です。表に載っていない落とし物がどれだけあるのかは、この資料からはわかりません。

参考:警視庁「遺失物取扱状況(令和7年中)」/e-Gov法令検索「遺失物法」第17条/警視庁「遺失物について」

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