八十三億円と四十五億円のあいだ

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なくした八十三億円と届いた四十五億円 第1章

令和7年の1年間に、警視庁管内で現金をなくしたと警察に届け出られた額は8,325,160,470円でした。約83億円です。警視庁が公表している「遺失物取扱状況(令和7年中)」にある数字で、範囲は東京都、期間は1月から12月までです。この年の遺失届は1,100,657件ありました。

同じ年に、拾われて警察に届けられた現金は4,508,824,075円でした。約45億円です。拾得届は4,538,244件、届けられた物品は4,850,775点でした。

件数で見ると、拾得届は遺失届の4倍を超えています。ところが現金の額では、拾得届のほうが遺失届より少なくなっています。

二つの額の差は3,816,336,395円、約38億円です。拾得届の現金を遺失届の現金で割ると54.2%になります。数字だけを並べると、なくしたと届け出られた額の半分ほどしか届いていないように見えます。

ただし、この二つの数字はそのまま引き算できるものではありません。遺失届の金額は、なくした人が届け出のときに申告した額です。警察が中身を数えて確かめた額ではありません。

また、二つの数字は一件ずつ突き合わせて出したものではありません。ある遺失届に対応する落とし物が届いたかどうかを、この表から知ることはできません。あとで自分で見つかった分や都の外でなくした分、年をまたいで届いた分も、遺失届の額に含まれている可能性があります。

届け出と処理の時期もずれます。警視庁の統計の第133表は、受理した件数と処理した件数は公告期間などのずれがあるため一致しない、と注記しています。実際に令和7年に処理された拾得物は4,498,284件で、受理した4,538,244件とは数が違います。

このため、約38億円を何かの行方を示す額と読むことはできません。統計から言えるのは、申告された額と届いた額のあいだに約38億円の開きがあることまでです。その開きの中身は、この数字からはわかりません。

この開きは令和7年だけのものではありません。同じページの年次の推移では、平成28年の遺失届の現金は82.6億円、拾得届の現金は36.7億円でした。

令和2年には両方が大きく減りました。拾得届の件数も、令和元年の415.2万件から280.6万件に落ちています。その後件数は戻り、令和7年には453.8万件と平成28年の383.2万件を上回りました。それでも平成28年から令和7年までの10年間、拾得届の現金はどの年も遺失届の現金を下回っています。

届いた落とし物のその後については、警視庁の案内があります。落とした人がわからない物は警察署でしばらく保管されたあと、遺失物センターに送られます。センターでは遺失届と拾得物を照らし合わせ、合うものがあれば落とした人に返すとされています。

案内によると、3か月たっても持ち主がわからないときや、持ち主が受け取りに来ないときは、拾った人のものになります。ただし、携帯電話やカード類のように個人情報が入った物は、拾った人には渡されません。このしくみは後の章でくわしく見ます。

ここで扱った数字は、すべて警視庁管内、つまり東京都のものです。全国でどれだけの現金がなくなり、どれだけ届いているのかは、この表からはわかりません。

次の章では、現金のほかにも届いた数となくしたと届けられた数が大きく食い違う物として、傘を取り上げます。

参考:警視庁「遺失物取扱状況(令和7年中)」/警視庁の統計(令和7年)第131表・第133表/警視庁「落とし物はどこへ行くの?」

次の章:傘は百本のうち二本も持ち主に帰らない

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