傘は百本のうち二本も持ち主に帰らない

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なくした八十三億円と届いた四十五億円 第2章

令和7年の1年間に、警視庁管内で拾われて警察に届けられた傘は331,882点でした。約33万本です。第1章と同じ警視庁の「遺失物取扱状況(令和7年中)」にある数字で、表では「かさ類」として点数で数えられています。この章では、点数を本数として書きます。

同じ年に、傘をなくしたと届け出られたのは9,154本でした。約9千本です。拾われた傘の数は、なくしたと届け出られた数の約36倍にあたります。

ほかの品目と比べると、この開きの大きさがわかります。主な物品の表では、財布類は拾得届が338,104点、遺失届が358,305点で、ほぼ同じ数が並んでいます。表に載っている品目の中で、傘ほど二つの数が離れたものはありません。

では、届いた傘はどうなったのでしょうか。同じページの処理状況の表によると、この年に処理された傘は275,406本でした。このうち、落とした人に返されたのは4,671本です。

処理された275,406本を分母にすると、返された割合は1.7%になります。百本のうち二本に届かない割合です。

処理された本数は、届けられた331,882本と一致しません。警視庁の統計の第133表は、受理した数と処理した数は公告期間などのずれがあるため一致しない、と注記しています。そのため、ここでは届けられた数ではなく処理の合計を分母にしています。

残りの内訳は、拾った人への引き渡しが170,556本、東京都への帰属が67,652本、廃棄・任意提出が32,527本です。持ち主に返された4,671本は、四つの区分の中でいちばん少ない数でした。

傘という言葉は法律の中にも出てきます。遺失物法第9条第2項は、警察署長が売却できる物の一つとして、傘や衣類、自転車など日常生活で使われて広く売られている物で政令で定めるものを挙げています。

こうした物は、公告の日から2週間以内に落とした人がわからないとき、売却できるとされています。同じ条の第4項は、売却したときは代金から売却の費用を引いた残りをその物とみなすと定めています。

警視庁の案内も、傘や衣類のように安く数の多い物などは、警察署長や特例施設占有者が2週間保管したあと売却できると説明しています。第1章で見た3か月という期間より、ずっと短い区切りです。ただし、処理状況の表には売却の区分がなく、実際に何本が売却されたかはこの表からはわかりません。

この表で目立つのは二つのずれです。一つは、届けられた傘の数に比べて、なくしたと届け出られた数がずっと少ないことです。もう一つは、返された4,671本が処理された傘のごく一部であることです。

返された数は遺失届の数の半分ほどにあたります。ただ、二つは一件ずつ突き合わせた数字ではありません。表から言えるのは、届く傘と届け出られる傘と返される傘の数が、まったく違う大きさで並んでいることまでです。その理由は、この数字からはわかりません。

傘とは反対に、なくしたと届け出られる数が拾われる数を上回る物もあります。次の章では、東京でいちばん多く届けられる落とし物である、自分を証明するものを取り上げます。

参考:警視庁「遺失物取扱状況(令和7年中)」/警視庁の統計(令和7年)第133表/e-Gov法令検索「遺失物法」第9条/警視庁「遺失物について」

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