解説を読んだ直後がいちばん危ない

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ノートがきれいな人ほど落ちやすい 第4章

「なるほど」と思えた瞬間が、なぜ危ないのでしょうか。それは、わかったという感覚と、あとで思い出せることが別のものだからです。解説を読んだ直後は、答えも理由も目の前にあります。頭のなかで探す必要がないので、すんなり理解できた気がします。けれどそれは、文章が読みやすかったという手ごたえに近いものです。

問題を解いて間違え、解説を開く。一行ずつ読むと、たしかに筋が通っています。なぜその選択肢が正しいのかも、読めば納得できます。そこで丸をつけて、次の問題へ進む。限られた時間で勉強する社会人には、ごく自然な流れでしょう。

ところが数日後に同じ問題を見ると、また同じ所で迷います。解説を読んだときの「わかった」は、読み返したときに起きやすい錯覚と同じ形をしています。目の前の文章がすらすら入ってくると、自分でも言えるような気がしてしまうのです。これが、この本で何度も見てきた「わかったつもり」の正体です。

第2章で触れた論文では、練習として自分を試すこと、つまり何も見ずに思い出す練習は効果が高いと評価されています。解説を読むことに効果がないわけではありません。解説は、理解の入り口として欠かせない材料です。ただ、読んで納得しただけで終えると、思い出す練習が一度も入らないまま次へ進んでしまいます。

では、解説を読んだあとに何をすればよいのでしょうか。ここでは、すぐに試せるやり方を三つ紹介します。

一つめは、答えを隠してから解くことです。問題集の解答や解説のページを、紙一枚で覆っておきます。正解をちらりと見てから考えると、それだけで解けた気になるからです。自信がなくても、まず自分の答えを決めてから紙をめくってください。外れた問題こそ、覚える必要のある所です。

二つめは、解説を閉じて自分の言葉で説明し直すことです。読み終えたら本を伏せ、なぜその答えになるのかを口に出してみます。誰かに教えるつもりで、三十秒ほど話せれば十分です。途中で言葉に詰まった所が、まだ自分のものになっていない所です。そこだけ解説を開き直し、もう一度閉じて言ってみます。

三つめは、同じ問題を翌日にもう一度解くことです。前の日に解説を読んだ問題には、印をつけておきます。翌朝の通勤や昼休みに、解説を見ずに解き直してみてください。一晩たっても解ければ、その知識は残り始めています。解けなければ、前の日の「わかった」がその場限りだったと気づけます。第3章で触れた、間を空けて戻る復習とも相性のよいやり方です。

ほかに、解説を閉じてから要点を一行だけ書き出す方法もあります。どれにも共通するのは、答えが目の前にない状態で頭から取り出すことです。

思い出す練習は、読むだけより手間がかかります。解けない問題に向き合うのは、気持ちのよい作業ではありません。けれど、その手ごたえのなさこそが、覚えるために頭が働いている印です。すらすら読めた心地よさより、つかえながら思い出した苦労のほうが、試験の日まで残りやすいのです。

ただ、思い出す練習を続けていると、つい解ける問題ばかり選びたくなります。点数が上がると安心できるからです。次の章では、あえて模試の点を上げない週をつくる意味を考えます。

参考:Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques: Promising Directions From Cognitive and Educational Psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. DOI: https://doi.org/10.1177/1529100612453266

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