マーカーを引くほど頭に残らない

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ノートがきれいな人ほど落ちやすい 第2章

参考書を開いて、大事そうな一文に線を引く。別の色で用語を囲み、余白に要点を書き添える。一時間もすると、ページは色であふれ、ノートには見出しのそろった要約が並んでいます。机の上を眺めれば、今日はよく勉強したと思えるはずです。

その気持ちは、うそではありません。実際に手を動かし、時間を使ったのですから。ただ第1章で触れたとおり、手を動かした実感と覚えた実感は別のものです。マーカーの色やノートの美しさは、作業の量を正確に映します。けれど頭のなかに何が残ったかまでは、映してくれません。

「ノートがきれいな人ほど落ちやすい」という書名は、まさにこの点を指しています。きれいなノートは努力の証拠に見えます。だからこそ、やった気になる作業のなかでもいちばん見分けにくいのです。整えることに力を注ぐほど、覚えるための時間は静かに削られていきます。

学習法の研究を広く見直した論文では、さまざまな勉強法の役立ち方が比べられています。そのなかで、マーカーや下線を引くことと要約を書くことは、効果が低いと評価されています。注意したいのは、効果がないと言い切られているわけではない点です。使い方や人によって差が出る可能性も示されています。ただ、多くの人が頼っているほどの効果は、確かめられていないということです。

なぜ線を引いても残りにくいのでしょうか。線を引くとき、頭がしているのは主に「選ぶ」作業です。大事だと判断することと、あとで何も見ずに言えることは同じではありません。しかも色のついた行は、読み返すたびに安心をくれます。目でなぞるだけで、知っている気がしてくるからです。その感覚が試験の日まで続くとは限りません。

ノートにまとめる作業にも、似たところがあります。参考書の文章を整えて書き写すあいだ、手は忙しく動いています。けれど内容は、ずっと目の前に置かれたままです。一度も思い出す必要がないまま、一冊ぶんのまとめができあがってしまうのです。

一方で、同じ論文で効果が高いと評価された方法があります。練習として自分を試すこと、つまり何も見ずに思い出してみることです。問題を解くのはもちろん、本を閉じて読んだ内容を口に出すだけでも、この練習になります。

線を引く習慣を、すべてやめる必要はありません。変えるのは役割です。線は、あとで思い出す場所の目印くらいに考えておく。一つの節を読み終えたら、いったん本を閉じる。そして線を引いた所に何が書いてあったかを、自分の言葉で言ってみてください。

言えなかった所が、本当に覚える必要のある所です。そこだけ開いて確かめれば、線は飾りではなく道しるべになります。ノートも、見返して満足するためではなく、閉じて答え合わせをするために使えば役目が変わります。

きれいなノートを作れる人は、丁寧に学ぶ力をすでに持っています。その丁寧さを、整える作業から思い出す作業へ少しずつ移していけばよいのです。思い出す練習の進め方は、第4章であらためて扱います。

次の章では、勉強する時間の置き方について考えます。休日にまとめて進めるのと、短い時間を何度も重ねるのとでは、何が違うのでしょうか。

参考:Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques: Promising Directions From Cognitive and Educational Psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. DOI: https://doi.org/10.1177/1529100612453266

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