ここまでの章で、試験委員の名簿、出題基準やシラバス、合格基準、正答と採点除外という公開資料を順に見てきました。どれも実施機関や所管の省庁の公式ページにあり、だれでも開ける資料です。
最後の章では、これらを受験の準備にどう使うかを、公式ページで探す四つの項目として整理します。特定の勉強法の効果を言い切る話ではなく、公開資料の集め方と読み方の手順の話です。
第一は、委員や委員会の説明です。第1章で見たように、試験委員の名簿や部会の役割を載せている試験があります。氏名の並びから一問の作者はわかりません。それでも、第3章で見たように、問題が作成から点検までどんな段階を通るのかを知る材料になります。
第二は、出題基準やガイドライン、シラバス、試験要綱です。第2章で見たとおり、範囲と水準を示す設計図にあたります。版と公表日もあわせて確かめておくと、自分の受ける回との関係を考えやすくなります。
第三は、合格基準です。その回の合格発表に載る点数と、要綱に書かれた基準点や変更の規定は、別の資料として分けて見ておきます。第4章で触れたように、難易差が認められた場合に基準点を変更することがあると明記している試験もあります。
第四は、正答と解答例、採点講評、それに採点除外等の取扱いです。第5章で見たように、何がどこまで公表されるかは試験ごとに違います。自己採点や振り返りには、非公式の解答速報より先に、実施機関が出した正答や解答例を開くのが確かです。
探すときは、公式サイト内の検索を使うか、受験案内や合格発表のページからリンクをたどれば足ります。見つかったPDFや説明ページは、試験名と資料の種類がわかる名前でブックマークしておきます。
回が新しくなると、資料の掲載場所が変わることもあります。新しい回の資料は、その試験の公式ページで改めて確かめます。古い回の資料も残しておけば、基準や正答の示し方を回ごとに比べられます。
補足として、司法試験の例も挙げておきます。司法試験委員会は、平成17年11月8日の決定(平成23年11月9日改正)で、論文式試験の出題の趣旨を、合格発表後に速やかに法務省のホームページ等に掲載すると定めています。
出題の趣旨が公表される試験では、過去問とあわせて、その問題で何を問おうとしたのかを読む手がかりになります。ただし、各年の出題趣旨がどのページに載っているかは、推測せずにその年の公式の案内で確かめてください。
四つの項目がそろうと、だれが書いたのか、わざと難しくしたのか、といった噂から少し距離を置けます。名簿で作り手の顔ぶれを知り、基準で範囲をつかみ、合格基準で物差しを確かめ、正答と講評で振り返る。公開資料をつないで地図を作る、というのがこの本の答えです。
参考:法務省「司法試験論文式試験における出題の趣旨の公表について」(司法試験委員会決定)/法務省「司法試験の実施に関する司法試験委員会決定等」/厚生労働省「第121回医師国家試験 試験委員名簿」/情報処理推進機構「組織紹介:情報処理技術者試験委員会・情報処理安全確保支援士試験委員会」/厚生労働省「令和6年版医師国家試験出題基準・ブループリントの趣旨」/情報処理推進機構「試験要綱・シラバスについて」/情報処理推進機構「試験要綱 Ver.5.6」/厚生労働省「第120回医師国家試験の合格発表について」/情報処理推進機構「過去問題」
前の章:正答と採点除外も公表される