出題基準は試験より先に出ている

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資格試験の問題はだれが作っているのか 第2章

資格試験の勉強を始めると、まず過去問を開く人が多いでしょう。どの分野が出たか、どの年が難しかったか。出題の範囲は、解いた問題の積み重ねから逆算されがちです。けれども作り手の側には、試験より先に公開されている設計図があります。

第1章では、試験委員の名簿は見えても一問の作者は見えないことを確かめました。この章では、その作り手が何を拠り所に問題を作っているのかを見ていきます。

医師国家試験では、厚生労働省が「医師国家試験出題基準」を公開しています。令和6年版の趣旨によると、出題基準は試験の「妥当な範囲」と「適切なレベル」を項目ごとに整理したものです。試験委員は、出題するときにこの基準に準拠するとされています。

あわせて公開されているのが、ブループリントと呼ばれる医師国家試験設計表です。出題基準の章や大項目ごとに、出題の割合を示しています。趣旨では、社会的に要請の高い分野を含む幅広い領域から出題し、頻度や緊急性の高い疾患は優先して出題するという考え方も示されています。

ただし、すべてが割合で縛られているわけではありません。利用法の説明では、出題割合の書かれていない中項目以下の事項は、試験委員会の判断で出題できるとされています。その場合も、日常の診療で出会うことの多い疾患や病態を優先するという方針です。作り手は白紙から自由に書くのではなく、決められた枠と方針の中で判断していることになります。

この出題基準は、大学での卒業前の教育をすべて網羅するものではないとされています。医師が医療の現場で第一歩を踏み出すときに、少なくとも身につけておくべき知識や技能、態度を項目に分けて示したものです。卒業前の教育のあり方や内容を縛るものでもない、と位置づけられています。

前後関係も確かめておきます。厚生労働省の審議会のページによると、令和6年版の出題基準が取りまとめられて公表されたのは、令和5年3月31日です。その前の平成30年版も、平成28年6月30日に公表されています。どちらも、名前に付いた年より前に出ていたことになります。どの回の試験から適用するかは、今回確認した厚生労働省の資料には書かれていませんでした。

情報処理技術者試験と情報処理安全確保支援士試験でも、似た設計図が公開されています。情報処理推進機構(IPA)は、試験要綱とシラバスをサイトに載せています。試験要綱には出題範囲や試験時間、出題形式などが書かれています。

シラバスは、試験区分ごとの人材像に照らして、必要な知識と技能の幅と深さを整理した資料です。IPAは、合格を目指すときの学習の指針として使うよう案内しています。

IPAのページでは、資料ごとに版と掲載日が示されています。2026年10月6日に確認したところ、試験要綱はVer.5.6で、2026年7月6日に掲載されていました。内容は技術動向などを踏まえて適宜見直すと書かれています。過去の改訂の案内には、「変更予定の公表」と題したものもあります。範囲が変わるときも、まず公式に告知されるということです。

受ける試験の公式サイトで、出題基準やガイドライン、シラバス、試験要綱といった言葉を探してみてください。あわせて、版と公表日を確かめておくと、自分が受ける回にどの版が関係するかを考える手がかりになります。過去問に入る前に範囲の地図を一枚手に入れておけば、何を厚く学び何を後回しにするかを決めやすくなります。

次の章では、その設計図のうえで一問がどう作られ、どう選ばれ、どう点検されるのかを、IPAが示す作成からチェックまでの流れから見ていきます。

参考:厚生労働省「令和6年版医師国家試験出題基準・ブループリントの趣旨、医師国家試験出題基準の利用法」/厚生労働省「医道審議会(医師分科会医師国家試験出題基準改定部会)」/情報処理推進機構「試験要綱・シラバスについて」

前の章:試験委員の名簿は公開されている

次の章:一問は作成からチェックまで通る

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