オトスミ文庫
祖母の銭湯で番台を手伝う夏休み。客は一日に数人で、扇風機は首が半分しか回らない。右側の籠には、風が一度も当たらない。
町の観測所に着任した陽菜は、毎朝、前任の岡田さんが残したメモのとおりに天気を読み上げている。そのメモは、妙によく当たる。
エントランスの掃除当番表に、誰も書いていない名前が毎週ひとつずつ増えていく。新任の会計係は、洗剤の領収書と表を見くらべて首をひねった。
雨の降らない村のかさ屋は、雨に使わない人にしか傘を売りません。そこへ旅の若者が来て、赤い柄の傘を買いたいと言いました。
賞味期限の切れた瓶が、冷蔵庫の奥から何本も出てきた。使いかけの理由を並べたら、あの頃の私が見えてきた。
毎週月曜、返却ポストに同じ本が届く。貸出記録には誰の名前もない。新人司書の私は、十二冊目を手に取った。
終電を逃した夜に、恋人と最寄りの一つ手前の駅から家まで歩くことになった。大阪の話は、まだ誰の口からも出ていない。
十二軒分の印鑑欄のうち、読んでいるのは私だけだった。三年目の班長が、回覧板の末尾に一文を足してみた。
築古マンションの固定電話に、前の住人宛の留守電が毎週木曜に入る。理由は見つかったのに、時刻だけが合わない。
寝る前に3分前後で読める短い話を、気分別に13本えらびました。笑いたい夜にも、読み聞かせにも使えます。