期限の数え方の本 第7章
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「必着」は、期限の日までに相手のもとに届いていることを求める指定だ。いつ出したかではなく、いつ着いたかで期限内かどうかが決まる。必着とするかどうか、何をもって着いたとするかは、募集要項や案内を書いた側が定めている。
届いた時を基準にする考え方は、民法にもある。第97条の見出しは「意思表示の効力発生時期等」で、第1項はこう定める。
「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。」
これを到達主義と呼ぶ。第2項は、届くのを相手方が妨げた場合の扱いだ。
「相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。」
第3項には、通知を出した人がその後に死亡したり、意思能力を失ったり、行為能力の制限を受けたりしても、そのために効力は妨げられないとある。
税務手続も、原則は同じ考え方をとる。国税庁は「税務手続に関する書類の提出時期」で、書類の提出日は「原則として税務官庁に書類が到達した日となります(到達主義)」と説明している。第6章の国税通則法第22条は、この原則に対する例外にあたる。郵便や信書便で出した納税申告書などに限り、通信日付印の日を提出日とみなす。国税庁はこちらを発信主義と呼ぶ。同じ国税庁の「発信主義の適用範囲を定める告示の制定」も、書類の効力は原則として税務官庁に到達した時に生じる、という前提から説明を始めている。同じページは、郵便で出しても到達主義のままの書類も挙げている。一つは、後続の手続に影響を及ぼすおそれのある書類で、例に差押換えの請求書がある。もう一つは、提出時期に具体的な制約がない書類だ。「速やかに」「遅滞なく」などの規定はあっても、具体的な提出期限の定めがない書類がこれに当たり、例に法人税・消費税の納税地の異動に関する届出書がある。
消印有効と必着の違いは、どの時点の日付を見るかにある。消印有効は郵便物を出した時の日付を見て、必着は相手に届いた時を見る。期限として同じ日付が書かれていても、どちらの指定かで、期限内として扱われる郵便物は変わる。税の書類のように法律で決まっている場面を除けば、どちらにするかは期限を決めた側の定めによる。
この本では、期限の数え方を七つの場面に分けて書いた。期間の数え方の共通の決まりは民法第138条から第143条にあり、法令や契約に別の定めがないときに使われる。初日を数えるかどうかは第140条、週・月・年で定めた期間の終わりは第143条の応当日で決まる。末日が休日に当たるときの扱いは、民法と行政機関の休日に関する法律、地方自治法、国税通則法がそれぞれ別の範囲で定めている。営業日は法律で一つに定義された言葉ではなく、中身は契約や約款などの定めによる。郵便で出す書類は、出した時を見るか届いた時を見るかで扱いが分かれる。どの場面の期限も、そこに当てはまる条文や定めで数え方が決まる。
参考:e-Gov法令検索「民法」(第97条)/e-Gov法令検索「国税通則法」(第22条)/国税庁「税務手続に関する書類の提出時期」/国税庁「発信主義の適用範囲を定める告示の制定」