コーヒーを我慢しても家計はほとんど動かない

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家計簿を三日でやめた人から貯金が増えていく 第3章

第2章では、平均貯蓄の数字に焦る失敗を見ました。焦ったときに次に起きやすいのが、小さな我慢に走ることです。毎日のコーヒーをやめる。甘い飲み物を控える。

手ごたえはすぐに感じられますが、家計全体を動かす力は思ったより小さいことがあります。目に見える我慢ほど、効果を大きく見積もってしまいがちなのかもしれません。

総務省の家計調査で、コーヒーまわりの支出を品目別に見てみます。2024年の二人以上の世帯では、コーヒー・ココアへの1世帯当たり年間支出金額は13,908円でした。月に直すとおよそ1,159円です。このうちコーヒーは年額7,890円、コーヒー飲料は年額5,619円です。

喫茶店などで飲む分は、「喫茶代」という別の品目になります。喫茶代は同じ二人以上の世帯で年額9,837円、月に直すとおよそ820円でした。節約の話でよく出る「外のコーヒー」は、こちらに近い支出です。

第1章でも触れたとおり、同じ年の二人以上の世帯の消費支出は1か月平均300,243円です。単純に12倍すると、年額はおよそ360万円になります。これを分母にすると、コーヒー・ココアの年額13,908円はおよそ0.4%、喫茶代の年額9,837円はおよそ0.3%です。

我慢の対象として目立ちやすい支出でも、家計の地図の上では細い線にすぎません。書名の「ほとんど動かない」は、意志の話ではなく割合の話です。

一つの例として、仮に1杯400円で考えてみます。この場合、平均の喫茶代の年額9,837円は、およそ25杯分にあたります。単価や回数は世帯によって違うので、あくまで目安をつかむための試算です。それでも、毎日やめるイメージと統計上の平均額には、かなり距離があることがわかります。

小さな我慢を否定したいわけではありません。無理のない範囲で無駄を減らすのは、悪いことではありません。失敗の形は、そこだけを家計改善の本体にしてしまうことです。気力をコーヒーに使い切ると、金額の大きい費目を見る余裕がなくなるおそれがあります。

同じ家計調査で二人以上の世帯の1か月平均を見ると、食料は89,936円、交通・通信は41,731円、光熱・水道は23,111円です。どれも、コーヒー・ココアの1年分より1か月分のほうが大きい費目です。我慢の話は残しつつ、先に見る場所を重い費目へ移すのが順番としては自然でしょう。

一杯を我慢した満足感と、家計の残高は別のものです。小さな我慢は補助線であって、本体の話ではありません。

次の章では、外食を全部やめるといった極端なゼロ化が、なぜ続きにくいかを考えます。

参考:総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」/e-Stat 家計調査 品目分類(全品目)(2020年改定)支出金額(年)2020年~2024年

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