すぐ返す人がいちばん考えている

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丁寧なメールほど読まれない 第4章

メールを送って数分で返事が来ると、少し意外に感じることがあります。ちゃんと読んでくれたのだろうか。深く考えずに返したのではないか。速い返事には、どこか軽い印象がつきまといます。反対に、何日もたってから届く長い返信には、それだけ時間をかけて考えてくれたのだという重みを感じがちです。

けれども、すぐ返す人をよく見ていると、考えていないわけではないことに気づきます。その人たちは、メールが届いた瞬間に何を決めるかをあらかじめ持っているのです。考える時間が短いのではなく、考える順番が決まっている。速さは反射ではなく、型から生まれています。

その型は、意外なほど単純です。届いたメールに対して取れる道は、たいてい三つしかありません。

一つめは、その場で答えることです。日程の可否や資料の受け取りのように、手元の情報だけで判断できるものは、読んだ流れのまま返してしまう。後回しにしても答えは変わらないからです。

二つめは、保留していることを伝えることです。すぐには答えられないけれど、受け取ったことと、いつまでに返すかは今言える。「確認して明日の午後までにお返事します」という一文がそれにあたります。

三つめは、はっきり断ることです。引き受けられない依頼や、自分が答えるべきではない相談なら、そのことを早めに伝えます。担当が別にいるなら、その人を案内するだけでも相手は次に進めます。

この三つのどれにするかを、届いた時点で決めてしまう。すぐ返す人がしているのは、実はそれだけです。

ここでよく見落とされるのが、二つめの道です。考えるべきことがある依頼ほど、人はきちんと答えられるまで黙っていようとします。中途半端な返事をするより、まとまった答えを一度で返したほうが誠実だと感じるからです。

ところが、受け取った側からは、その沈黙の中身が見えません。真剣に検討しているのか、読み落としているのか、それとも忘れられているのか。返事がない数日間は、考えている時間ではなく放っておかれている時間に見えてしまいます。相手は催促するべきか迷い、自分の予定も組めないまま待つことになります。

保留の一報は、その迷いを取り除きます。受け取りました。いま確認しています。金曜までにお返事します。たったそれだけで、相手は待つ理由と待つ期限を手に入れます。中身の答えはまだでも、これは立派な返事です。

深く考えることと、最初の一報を遅らせることは、別の話です。考える時間をたっぷり取りたいなら、なおさら先に一言を送っておいたほうがいい。期限を伝えておけば、その日までは落ち着いて考え込むことができます。黙ったまま考えると、催促が来ないかと気にしながら考えることになりがちです。

断る道も、遅らせるほど重くなります。引き受けられないと分かっていながら返事を延ばすと、相手はその間に別の手を打つ機会を失います。早めの「お受けできません」は冷たく見えて、実は相手の時間を守る返事です。

すぐ返す人は、急いでいるのではありません。届いた瞬間に、答えるか、待ってもらうか、断るかを選んでいるだけです。考えるのはそのあとでもかまわない。まず道を一つ選んで、それを相手に知らせる。その小さな一手が、やりとり全体の速さを決めていきます。

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