件名を一行変えただけで返事が来た

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丁寧なメールほど読まれない 第2章

受信箱に並んだメールの中から、どれを先に開くか。多くの人はほとんど考えずに決めています。目に入るのは差出人の名前と件名の一行だけです。本文がどれほど丁寧に書かれていても、その一行で後回しにされれば、読まれるのはずっと先になってしまいます。

よく見かける件名に「ご相談」や「お願い」があります。礼儀正しく、角も立ちません。けれども受け取った側からすると、何の相談なのか、急ぐのかどうかが分かりません。開いてみるまで中身が見えないメールは、時間のあるときに読もうと思われて、そのまま埋もれていきがちです。

「Re: Re: Re:」と続く件名も似たところがあります。最初のやりとりの題名が残ったまま、話題だけが少しずつ別のものに移っていく。三通前には日程の話だったのに、いまは資料の修正をお願いしている。そうなると件名は案内ではなく、むしろ目くらましになってしまいます。

件名が曖昧になる理由は、第1章で触れた長いメールの理由とよく似ています。いきなり用件を書くのは失礼ではないかという遠慮。中身を読んでもらえば分かるはずだという期待。そして、書き手自身が何を頼みたいのかをまだ決めきれていないこと。件名は本文よりも短いぶん、その迷いがそのまま表に出ます。

では、件名には何を書けばよいのでしょうか。基本は、本文の冒頭に置く目的の一文をさらに縮めたものだと考えると分かりやすくなります。何の件か。相手に何をしてほしいか。できればいつまでか。この三つが一行に収まっていれば、受け取った人は開く前に用件の大きさを見積もることができます。

たとえば「ご相談」という件名は、「来週の定例会の日程変更のご相談(10日までにご返信ください)」と書き換えられます。「資料の件」であれば、「提案資料の修正版をお送りします(確認のみで返信不要です)」とするだけで、相手は読み方を決められます。「Re: Re: お打ち合わせについて」のまま別の依頼をするくらいなら、件名を新しく付け直したほうが親切です。

返信が不要なときに、そう書いておくことにも意味があります。返事をすべきかどうか迷わせないことは、それだけで相手の手間を一つ減らします。反対に返事がほしいときは、「ご回答のお願い」や「ご承認のお願い」のように求める動作を件名の中で言葉にしておくと伝わりやすくなります。

件名を具体的にすると、ぶしつけに見えるのではないかと心配する人もいるでしょう。けれども丁寧さは件名の言い回しではなく、相手が迷わずに済むかどうかに表れます。中身の見えない丁寧な件名より、用件がひと目で分かる件名のほうが、結果として相手を大切に扱っていることになります。

もちろん、件名だけで何もかも伝える必要はありません。長くなりすぎた件名は、それ自体が読みにくくなります。一行で収まらないときは、いちばん大事な動作と期限を残して背景は本文に回せば十分です。

件名を一行変えただけで返事が来る。それは魔法ではなく、相手が開く前に考える手間を書き手が先に引き受けたからです。送信する前に件名だけをもう一度読み返して、これで何をすればいいか分かるだろうかと自分に問いかけてみてください。

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