短いメールほど手間がかかっている

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丁寧なメールほど読まれない 第1章

朝いちばんに受信箱を開くと、何度もスクロールしないと終わらないメールが届いていることがあります。経緯の説明から始まり、関係者の名前が並び、最後のほうでようやく「ご確認ください」と書かれている。読み終えたあとに残るのは、それで自分は何をすればいいのだろう、という小さな戸惑いです。

一方で、三行ほどで終わるメールもあります。何の件か、何をしてほしいか、いつまでか。それだけが書かれていて、読んだ瞬間に次の動きが決まる。こうしたメールを受け取ると、そっけないと感じるより先に、ほっとする人のほうが多いのではないでしょうか。

短いメールは手抜きに見えがちです。けれども実際には、書き手が先に考え込んで、読み手が考えずに済むようにした結果であることが少なくありません。長い文章をそのまま送るのは、整理する作業を相手に預けることでもあります。短く書くというのは、その作業を自分の側で引き受けて、相手には時間と次の一手だけを渡すことだと言い換えられます。

では、なぜメールは長くなってしまうのでしょうか。よくある理由の一つは不安です。説明が足りないと思われたくない。失礼だと受け取られたくない。そうした気持ちが前置きや言い訳を一文ずつ増やしていきます。

もう一つは、責任をどこかに預けておきたいという気持ちです。あとで何か起きたときに「ちゃんと書いておきました」と言えるように、思いつく限りの情報を詰め込む。書いた本人は安心できますが、読む側はどこが大事なのかを自分で探すことになります。

そして三つめは、書き手の中で考えがまだまとまっていないことです。何を頼みたいのかが自分でもはっきりしないまま書き始めると、文章は考えをたどる道のりそのものになります。長いメールの多くは、下書きのメモがそのまま送られたものなのかもしれません。

ここで大切なのは、文字数を削ることそのものではありません。短くする前に、決めておきたいことが三つあります。

一つめは、このメールの目的を一文で言うと何か、ということです。来週の打ち合わせの日程を決めたい。見積もりの金額に了承がほしい。一文にできないなら、それはまだ送る段階ではないという合図かもしれません。

二つめは、相手にしてほしい動作です。読んでおいてほしいのか、返事がほしいのか、それとも誰かに回してほしいのか。動作が決まると、メールに必要な情報もおのずと絞られていきます。

三つめは期限です。いつまでに動いてもらえると助かるのかが書かれていれば、相手は自分の予定の中にその用件を置くことができます。期限のない依頼は、親切なようでいて、優先順位を決める手間を相手に残してしまいます。

この三つが決まると、本文はずいぶん短くなります。足りない背景があれば、そのあとに添えれば十分です。順番を入れ替えるだけで、同じ内容でも読み手の負担は大きく変わります。

もちろん、どんな場面でも短ければよいというわけではありません。初めてやりとりする相手や込み入った事情を伝えるときには、言葉を尽くしたほうがよいこともあります。ただ、その場合でも冒頭に目的と頼みごとがあれば、長い文章は迷路ではなく地図になります。

短いメールを書く人は、言葉を惜しんでいるのではなく、相手の時間を惜しんでいる。そう考えると、送信ボタンを押す前の数分間の見え方も、少し変わってくるはずです。

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