のしと表書きの本 第4章
表書きは、昔の贈り物に添えた目録から変わってきたものです。目録には、何をいくつ贈るかを書き記していました。いまは贈る目的に合った言葉を選び、掛紙やのし紙の上段に書きます。下段には、贈り主の名前を表書きよりやや小さく書きます。
書き出しは、上の端から字一つ分ほど空けます。最後の字と水引の間にも、一字分の余白を残すのが目安です。字数が多くて水引に届きそうなときは、もっと上から書き始めてもかまいません。どの字も、のしや水引に重ならない位置に収めます。
筆記具は毛筆が正式で、万年筆やボールペンは避けます。書体は楷書が一般的です。和歌山・泉州地方や三重県の一部には、慶事の表書きを朱墨で書く地域もあります。弔事では薄墨を使い、涙で墨が薄れたという意味や、悲しみが早く和らいでほしいという意味が込められています。薄墨の扱いと弔事の表書きは、第6章で詳しく取り上げます。
季節の挨拶の品は、届く時期によって表書きが変わります。中元のあとは暑中・残暑、歳暮のあとは年賀・寒中というように、同じ品でも言葉を切り替えます。掛紙は、のしありの紅白五本蝶結びを使います。
- お中元:六月下旬から七月十五日頃までが目安です。
- 首都圏のお中元:七月上旬から七月十五日までに届けるのが一般的です。
- 七月十五日を過ぎたら:「暑中お伺い」「暑中御見舞」に切り替えます。
- 立秋(八月八日か九日)を過ぎたら:「残暑お伺い」「残暑御見舞」に切り替えます。
- 首都圏以外のお中元:七月上旬から八月十五日頃までが期間で、それより後は「残暑お伺い」「残暑御見舞」とします。
- お歳暮:十二月上旬から二十五日頃までが目安です。
- 年が明けてから届けるとき:「お年賀」か「寒中御見舞」とします。
- その年だけお世話になった相手への歳暮:一度きりの贈り物なので「御礼」か「粗品」とします。
一般の贈答の表書きは、相手との関係や品物に合わせて選びます。ちょっとした気持ちを伝えたいときは「粗品」や「御礼」が向いています。「志」も、ささやかな気持ちを表す言葉ではありますが、弔事のお返しに使うのが一般的なので避けます。「粗品」は相手が目上でも目下でも使える一方、「寸志」は目上から目下へ贈るときだけに使います。
- 粗品:目上の方へのささやかな品に使います。へりくだる言葉なので、高価で立派な品には向きません。
- 心ばかり:「ちょっとしたものですがどうぞ」と気軽に差し出すときに使います。
- 松の葉・みどり:「ほんの手土産」という意味合いで、目下の方への贈り物に使います。
- 御伺い:目上の方のお宅を訪ねるときの手土産に使います。
- 御挨拶:訪問や挨拶のときの手土産に使う表書きの一つです。
- 謹呈:「謹んで差し上げます」という心持ちを表し、目上の方や社会的な立場の違う方に使います。
- 贈呈・贈:慶弔やお見舞い以外で、会社や団体に品物を贈るときに使います。目上の方には使わないほうがよいとされます。
- 上:基本的には、目上の方や神仏・先祖に対して使います。
- 寸志:目下の方に金品を贈るときに使います。ここでいう目下は年齢の差ではなく、公的な上下関係のことです(詳しくは第7章)。
病気見舞いのお返しは、まだ治りきっていない段階なら紅白五本結び切りの「御見舞御礼」とします。回復の具合によって、表書きを次のように使い分けることもあります。
- 快気内祝:退院(床上げ)からしばらくして落ち着いたころ。通院や検診が続いていても使います。
- 全快内祝:医師の手を離れたころ。
- 本復内祝:全快したあと、元どおりの暮らしに戻ったころ。
結婚祝いの表書きには地域差があり、関西では「御結婚御祝」、関東では「寿」が多いとされます。弔事の「御供」や「志」の使い分けは、第6章で取り上げます。
「快気内祝」「還暦御祝」のような四文字の表書きは、「死文字」として気にする人もいます。その場合は「快気之内祝」のように五文字にする方法があります。「快気」と「内祝」を二行に分けて書く方法や、「祝」をやや大きくして「還暦」を少し離して書く方法もあります。
次の章では、「のしの名前の書き方と連名の順番」として、表書きの下に書く名前の位置と連名の並べ方を見ていきます。
参考:高島屋「進物の基礎知識 表書きの書き方」/高島屋「粗品・手土産」/高島屋「歳暮」/高島屋「よくあるご質問」/高島屋「お中元の熨斗(のし)の意味や書き方」/日本経済新聞「地域で異なる『のし紙』文化(もっと関西)」
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