短い物語を一本書くまでの五つの手順

夜の机の上の原稿用紙と万年筆、小さなスタンドの灯り。

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「物語を書いてみたい」と思ったことはあるだろうか。思ったことはあっても、書き出せないまま年月が過ぎてしまう人は多い。最初の壁は、たいてい「何を書けばいいのか分からない」ことだ。けれど短い物語なら、実は五つの手順で書き上げることができる。ここでは、その手順を順番に紹介したい。

手順一 ひとつの場面を決める

まず、場面をひとつだけ選ぶ。電車の中でも台所でも、雨の日のバス停でもいい。「誰が、どこにいるか」だけを決める。物語の最初のアイデアは、たいてい設定ではなく場面から生まれてくるもので、壮大な世界観や複雑な人間関係はいらない。

手順二 ひとつの「ちがい」を置く

次に、その場面に「ちがい」をひとつだけ置く。毎日同じ席に座る人の隣に、見知らぬ傘がある。毎朝のバスが三分遅れる。いつもの喫茶店のメニューが、一品増えている。「いつもと違う」。この小さなずれが物語の入り口になるから、読み手が「あれ」と気になる感覚を、最初に作っておく。

手順三 登場人物をひとり増やす

主人公のほかに、もうひとり人物を足す。老人でも子どもでも店員でも、誰でもいい。その人は、主人公とは少し違う視点を持っている。二人の会話が物語を動かすので、短い物語では、人物は二人か三人で十分だ。

手順四 結末を書きすぎない

結末は言い切らないほうが余韻が残る。「こうして、みんなは幸せになりました」と書かずに、そのあとのほんの一場面だけを描く。窓の外の景色、湯のみの湯気、閉じた扉の音。読者が物語の続きを自分の頭の中で想像できる余白が、短い物語のいちばんの魅力だ。

手順五 声に出して読む

書き終えたら、声に出して読んでみる。リズムが悪いところ、つっかえるところ、同じ言葉が続くところがすぐに分かる。直すのは少しでいい。読点の位置、言い回し、ひと言の選び方。それだけで文章は驚くほど読みやすくなる。

まずは四百字から

最初から長い物語を書く必要はない。四百字、原稿用紙一枚から始めてみる。書き終えたとき、「自分にも書けた」という小さな自信が、次の一本につながっていく。今夜、ノートを一ページ開いてみよう。最初の一文は、「雨の日のバス停で」でも「台所の窓の外に」でもかまわない。

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