眠れない夜のささやかな儀式

夜の台所の窓辺。湯気の立つマグカップと、窓の外にまたたく星。

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眠れない夜は、時計の針の音がやけに大きく聞こえる。早く寝なければと思うほど、目は冴えていく。そんなとき、あえて「眠ろう」とするのをやめてみる人は意外に多い。ここでは、身近な人たちから聞いた習慣を三つ紹介したい。眠りを約束するものではないけれど、夜の時間が少しだけ優しくなる工夫ばかりだ。

一 温かい飲みものをゆっくり

白湯やほうじ茶など、カフェインの少ないものを選ぶ人が多かった。大事なのは中身よりも、湯気を見ながらゆっくり飲むという時間の使い方だという。会社員の友人は、マグカップを両手で包んで台所の窓のそばに立つ。「外の暗さと湯気の白さを、ただ見ているだけ。五分で気持ちが静かになる」と話していた。

二 紙の本を数ページだけ

画面の光は目を冴えさせる、とよく言われる。そこで、寝る前だけは紙の本に切り替える人もいる。ポイントは、続きが気になる本を選ばないことだ。何度も読んだ本やエッセイ、詩集など、どこから開いても終われるものが向いている。数ページ読んでまぶたが重くなったらそこで閉じて、栞は挟まない。明日はまた別のページから読めばいい。

三 今日よかったことを一つだけ思い出す

眠れない夜は、つい反省会を始めてしまう。あのときの一言、あの失敗と、頭の中の会議は気づけば深夜に及ぶ。そこで反省会は朝に回し、夜は「おいしかった」「空がきれいだった」くらいのささいなことを、一つだけ思い出す。二つ思いつくと頭が働き出してしまうので、一つで止めるのがコツだそうだ。

眠れなくてもいい

どれも眠りを約束するものではない。それでも、「眠れない時間」を「自分のための時間」と言い換えるだけで、夜の見え方は変わる。眠れない夜は、世界に取り残された夜ではなく、自分に戻れる夜でもある。

今夜も眠れなかったら、湯気を眺めてみるのも悪くない。まずは、お気に入りのマグカップを枕元の近くに置いておくところから。

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