最低賃金の本 第1章
最低賃金制度は、最低賃金法に基づいて国が賃金の最低限度を決め、使用者にその額以上の支払を求める仕組みです。支払わなければならない、という義務が制度の芯です。時給や月給の目安表ではなく、法律上の下限を置く仕組みです。特設サイトでも、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額を定めた制度、と要約されています。国が下限を決め、使用者がそれを下回って払うことはできない、という構造です。
最低賃金額より低い賃金を、労働者と使用者の双方が合意して定めても、その部分は法律により無効とされます。無効になったその部分は、最低賃金額と同額の定めをしたものとみなされます。最低賃金法の第4条第1項は、使用者は最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない、と置きます。同条第2項が、達しない賃金を定める部分を無効とし、無効となった部分は最低賃金と同様の定をしたものとみなす、と続けます。
合意で下回っても、契約書に書いた低い額がそのまま残るわけではありません。下限未満の支払しかしていなかった場合は、最低賃金額との差額を支払わなければなりません。無効・みなしと差額の支払までが、制度説明の一続きです。個人の賃上げの話や手取りの増やし方、計算ツールへの誘導は、ここでは扱いません。
適用の範囲はかなり広いです。FAQでも、原則として事業場で働くすべての労働者であり、パートやアルバイトといった雇用形態や呼称にはよらない、とあります。地域別最低賃金の線は、産業や職種を問わず、その都道府県の事業場で働く労働者と使用者のすべてに及びます。特定最低賃金の線は、特定の地域のなかで特定の産業に属する基幹的な労働者と、その使用者に及びます。
派遣で働く人には、派遣元ではなく派遣先の側の最低賃金が使われます。派遣元の所在地ではなく、実際に働く先の都道府県や産業の線で判断します。呼称が正社員でもアルバイトでも、最低賃金の適用地図は同じ側にあります。対象となる賃金の中身や、時間額への換算の仕方は、後の章に分けます。
最低賃金の種類は、地域別最低賃金と特定最低賃金の2つです。両方の最低賃金が同時に適用される場合には、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。低い方だけを選べば足りる、という読み方にはなりません。罰則の区分も地域別と特定で条文の置き場が違うため、罰則の話は後の章に回します。種類ごとの中身と、都道府県の金額の見方は、次の章以降に分けます。
次は、都道府県ごとに1つ置かれる方の最低賃金の中身です。
参考:厚生労働省「最低賃金制度とは」/厚生労働省「最低賃金制度の概要」/厚生労働省FAQ「最低賃金について」/e-Gov「最低賃金法」/最低賃金特設サイト
次の章:地域別最低賃金