丁寧なメールほど読まれない 第6章
書き上げたメールを送る前に、少しだけ手を止めてみます。そして一文ずつ、なくても困らない言葉を消していきます。
最初に消えるのは、長い前置きです。次に、同じ意味を言い直した文が消えます。「念のため」と添えた補足も、相手が求めていないものなら外れていきます。謝る必要のない場面に置いた謝罪も、ここで静かに姿を消します。
不思議なことに、削っても削っても消えない一文があります。それが結論です。何を伝えたいのか。相手に何をしてほしいのか。その答えにあたる一文だけは、どれだけ手を入れても残ります。
たとえば会議の日程を変えたいという連絡なら、最後に残るのは「来週の打ち合わせを木曜に移していただけますか」という一文かもしれません。経緯も事情も大切ですが、それは結論のあとに短く添えれば足ります。読み手が最初に知りたいのは、自分が何を判断すればよいかだからです。
削り終えた文面を見ると、少し心細く感じるかもしれません。こんなに短くて失礼ではないだろうか。そう思って、消した言葉をまた戻したくなることもあるでしょう。けれども受け取る側の目で読み直してみると、印象は変わります。用件がすぐに分かり、返事の書き方も迷わない。短くなった文面は、相手にとって読みやすく、答えやすいメールになっているはずです。挨拶やお礼の一言は残してかまいません。削るのは、結論の前に立ちはだかっている言葉だけです。
私たちが丁寧さだと思って足してきた言葉の多くは、実は書き手の不安を和らげるためのものでした。失礼に思われたくない。説明不足だと言われたくない。その気持ちは自然ですし、責めるようなものではありません。ただ、その言葉が増えるほど、相手は結論を探す手間を背負うことになります。
だとすれば、丁寧さの正体は言葉の量ではないはずです。相手が最初の数行で用件をつかみ、すぐに次の動きを決められること。読み手の時間を大切に扱うこと。そのために結論を先に差し出すことが、いちばん誠実な気遣いなのだと思います。
削る作業は、冷たくなるための作業ではありません。自分が本当に伝えたいことを、自分自身で確かめる作業です。結論の一文が見つからないときは、文章の問題ではなく、考えがまだまとまっていない合図でもあります。そういうときは、書き直すより先に少し考え直すほうが近道になります。
送信ボタンを押す前に、次の問いを自分に投げかけてみてください。
- このメールの結論は一文で言えるか
- その一文は冒頭の近くにあるか
- 相手にしてほしいことと期限は書いてあるか
- 消しても意味が変わらない文は残っていないか
- 謝罪や補足は本当に必要な場所だけにあるか
全部に答えられなくても構いません。一つ目の問いに答えられれば、メールの骨格はもうできています。
丁寧なメールを書こうとして、言葉を重ねてきた人ほど、削ることに勇気がいるかもしれません。けれども最後に残った一文は、相手のことを考え抜いたからこそ見つかった一文です。その一文を先頭に置いて送る。それだけで、あなたのメールはきっと読まれるようになります。
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