第5章では、風の1位の富士山に今の観測を示す印がないことを見ました。最後の章では、雪の記録を見ていきます。日本でいちばん深く雪が積もったのは、どこだったのでしょうか。
気象庁の歴代全国ランキングを2026年10月時点で見ると、最深積雪の1位は滋賀県伊吹山の1182センチです。メートルに直すと11メートル82センチで、起日は1927年2月14日です。
2位は青森県酸ケ湯の566センチで、2013年2月26日の記録です。1位の1182センチは2位の2倍を超えていて、差は616センチです。566センチを2倍しても1132センチなので、まだ1位には届きません。
ここで、表の「現在観測を実施」の欄に目を移します。酸ケ湯には、今も観測を続けている地点を示す丸印がついています。伊吹山には気象台などを示すアスタリスクがついていますが、この欄は空欄です。表の見方では、空欄は廃止された地点での値とされています。
伊吹山では、いつまで雪を測っていたのでしょうか。滋賀県立公文書館の展示によると、伊吹山観測所は山頂のいちばん高いところに置かれ、大正8年1月1日に山の気象の観測を始めました。
同じ展示によると、観測所は昭和4年に国の機関に移って中央気象台附属伊吹山測候所となりました。その後、平成13年に廃止されるまで観測は途切れずに続いたとされています。1927年は昭和2年なので、1182センチは国に移る前の記録です。
展示は、この冬の山頂の様子にも触れています。昭和元年から2年にかけての冬には、5メートルを超える積雪が5か月、10メートルを超える積雪が2か月続いたそうです。
公文書館の展示は、この記録を「山岳観測史上、最深積雪世界一」と紹介しています。これは展示自身の言い方で、気象庁のランキングが示しているのは国内の地点のなかでの1位です。
空欄は、ほかの表にもありました。第5章で見た、風の1位の富士山です。気象庁の報道発表によると、富士山頂では昭和7年から職員が常駐して気象観測を続けてきました。
その発表は、自動観測の技術などが進んで、職員がいなくても必要な観測を自動で行えるようになったと説明しています。そのうえで、平成16年の夏季期間のあとに山頂庁舎での職員の常駐を終えるとしています。
ただし、同じ富士山でも最低気温の表では丸印がついています。最深積雪の表では338センチで16位に入っていて、こちらは空欄です。表によって印が違う理由までは、ランキングの表からは読み取れません。
日本一の記録のなかには、もう測っていない場所に残っているものがあります。伊吹山の観測は平成13年に終わっているので、伊吹山の1182センチがその場所で更新されることはありません。ほかの地点が上回る可能性は、また別の話です。
第1章では、暑さの1位と寒さの1位の差が82.8度だと見ました。暑さの上位20件には、2025年と2026年の記録が9件入っていました。寒さの1位の旭川は1902年の記録で、今も丸印がついています。
暑さの表には新しい年の記録が入り続けている一方で、雪の1位は昭和2年の数字のまま表のいちばん上にあります。日本一の記録は、今も測り続けている町にも、測るのをやめた山にも残っています。
参考:気象庁「歴代全国ランキング」/滋賀県立公文書館「滋賀を科学する 県彦根測候所のはじまり」/気象庁 報道発表資料「富士山測候所山頂庁舎の非常駐化について」