引越しの本 第4章
前章では電気とガスと水道の手続きを見てきました。暮らしの土台が整ったら、次に考えたいのがネット回線です。電気やガスは連絡すれば開始日に合わせて使えることが多い一方で、ネット回線は工事が絡むぶん準備に時間がかかります。引越し当日から使いたいなら、ライフラインと同じか少し早めに動き始めるのが安心です。
最初に決めるのは、今の契約を新居に移すか、いったん解約して新しく契約するかです。同じ契約のまま住所を変える手続きは、一般に移転と呼ばれます。移転なら契約が続くため、解約にともなう費用はかからないことが多いです。ただし新居が提供エリアの外にあれば移転はできませんし、移転先で工事費がかかる場合もあります。解約を申し出る前に、まず移転できるかを契約している事業者に確かめておくと判断を誤りにくくなります。
どちらを選んでも、新居での開通には工事が必要になることがあります。工事日は申込みの順に埋まっていくため、引越しの時期が重なると希望日が取りにくくなります。予約は引越し日より前に動く必要があることが多く、何日前までに申し込めばよいかは事業者ごとに違います。引越し日が決まった時点で問い合わせておけば、ネットが使えない期間を短くできます。
解約を選ぶ場合は、かかる費用をまとめて確認しましょう。主なものは契約期間の途中で解約したときの違約金と、分割で払っている開通工事費の残りです。2022年7月に施行された制度改正により、一般消費者向けの契約では違約金の上限が月額利用料相当額とされました。工事費の残りも契約期間に応じて減らした額までしか請求できず、契約期間を満了したあとは請求できないことになっています。ただしそれより前に結んだ契約には経過措置があり、実際の金額は契約内容によります。
ほかにも見落としやすい費用があります。回線の撤去工事が必要かどうかは建物や契約によって変わり、利用者の希望で撤去する場合は工事費が請求されることがあります。ルーターなどのレンタル機器には返却の期限と方法が決まっていて、返さなかったり壊したりすると費用を求められることがあります。解約の連絡をするときは、解約日に請求される項目と金額をひととおり聞いておくと安心です。
集合住宅では、建物の設備によって手順が変わります。建物にすでに回線が引き込まれている物件では、部屋の中の配線だけで使えることがあります。全戸でまとめて契約している建物なら、個別の申込みがいらない場合もあります。反対に、建物に設備がない物件や戸建てでは外から線を引き込む工事が必要になり、管理会社や大家さんの許可が求められることもあります。
新居で使える回線を知るには、まず管理会社や不動産会社に建物の設備を聞いてみましょう。そのうえで回線事業者の提供エリアを調べれば、選べる道が見えてきます。新しく契約したあとで考え直したくなったときは、契約書面を受け取った日を含めて8日以内なら初期契約解除制度を使える場合があります。ただし工事費などの実費は支払うことになるため、契約は内容を確かめてから結ぶのが基本です。