敬語の本 第7章
第6章では「とんでもございません」が使える範囲を見ました。最終章では、仕事のメールでよく並ぶ「拝見」と「拝読」を取り上げます。どちらも自分の行為をへりくだって言う語ですが、もとになる行為が違います。
文化審議会答申「敬語の指針」は、謙譲語Ⅰの特定形の主な例として「拝見する(←見る)」を挙げています(26頁)。見る行為が向かう先の人を立てる言い方です。28頁の注には、「拝見」「拝借」などは「拝見する」「拝借する」と動詞の形で使うほうが一般的だという説明もあります。一方、「拝読」は指針の本文には出てこないため、意味は辞書で確かめます。
小学館の『デジタル大辞泉』では、「拝見」は見ることをへりくだって言う語で、謹んで見ることと説明されています。用例は「お手紙拝見しました」です。
同じ辞書で「拝読」は、読むことを、その筆者を敬って言う謙譲語とされています。用例は「御著書拝読しました」です。違いの中心は、見るのか読むのかという一点にあります。
使い分けるときは、自分が実際に何をしたのかを動詞で言い直してみます。写真や図、届いた品物などに目を通したのなら「見る」なので拝見です。原稿や著書のように文章を読んだのなら「読む」なので拝読が合います。拝読には筆者を敬う意味が含まれるので、書いた人がはっきりしている文章に向いています。
「拝見させていただきます」という言い方もよく見かけます。これは第4章で見た「させていただく」の条件に当てはめて考えます。相手の許可を受けて行い、そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちがあるかどうかです(指針40頁)。条件にあたらない場面なら、「拝見します」「拝読しました」のように言い切るほうが簡潔です。
注意したいのは、相手の行為に拝見を使わないことです。謙譲語Ⅰは自分の側の行為に使う語なので、「ご拝見ください」のように相手が見ることを表すのは誤りです。相手に見てほしいときは、尊敬語の「御覧になる」を使って「御覧ください」とします。
まとめると、拝見は見ること、拝読は読むことをへりくだって言う語です。拝見は指針に例として挙がり、拝読は辞書の語釈で意味を確かめられます。
参考:文化審議会答申「敬語の指針」/小学館『デジタル大辞泉』「拝見」「拝読」(コトバンク)
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