おっしゃられるは二重敬語か

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敬語の本 第5章

第4章では「させていただく」の条件を見ました。ここでは、「おっしゃられる」は二重敬語なのか、というよく聞かれる疑問を取り上げます。答えから言うと、「敬語の指針」の定義に照らせば二重敬語に当たります。ただし、二重敬語と似て見える別の型とは分けて考える必要があります。

文化審議会答申「敬語の指針」の30頁によると、「二重敬語」とは一つの語に同じ種類の敬語を重ねて使ったものです。例に挙がっているのは「お読みになられる」です。「読む」を尊敬語の「お読みになる」にしたうえで、さらに尊敬語の「れる」を加えた形です。指針は、二重敬語は一般に適切ではないとされているとしつつ、語によっては習慣として定着しているものもあると述べています。

定着している例として指針が挙げるのは、尊敬語の「お召し上がりになる」「お見えになる」と、謙譲語Ⅰの「お伺いする」「お伺いいたす」「お伺い申し上げる」です。「おっしゃられる」は、この例には入っていません。

「おっしゃられる」も同じ組み立てで、「言う」の尊敬語「おっしゃる」に、さらに尊敬語の「れる」を加えています。国立国語研究所のことば研究館では、加藤祥氏がこの形を指針の説明に沿って二重敬語として紹介しています。

同じ記事は、実際の使われ方も調べています。書き言葉のコーパスでは、「おっしゃる」の用例のうち「おっしゃられる」は3.2%でした。ウェブのコーパスでは3.9%、話し言葉のコーパスでは2.0%にとどまっています。使われてはいるものの、多い言い方ではないことがわかります。

ただし記事は、使用を禁じる立場はとっていません。大学生を対象にした意識調査では、二重敬語を気にしない人のほうが多く、印象もよいと答えた人が多かったという研究も紹介しています。聞く人の受け止め方も、使われ方に影響するだろうという見方です。

二重敬語と紛らわしいのが「敬語連結」です。二つ以上の語をそれぞれ敬語にして、接続助詞の「て」でつないだものを指します。指針の例は「お読みになっていらっしゃる」です。「読んでいる」の「読む」と「いる」を、別々に尊敬語にしてつないだ形です。これは二重敬語には当たりません。

敬語連結は、多少くどく感じられることがあっても、一つ一つの敬語が適切で、つなぎ方に意味の無理がなければ基本的に許容されます。指針は「お読みになってくださる」「お読みになっていただく」「御案内してさしあげる」も許容される例として挙げています。

一方で、「伺ってくださる」「伺っていただく」は不適切な連結の例とされています。先生が自分の家を訪ねることを謙譲語Ⅰの「伺う」で言うと、立てる相手が「私」の側になってしまうからです。

見分けるときは、一つの語に同じ種類の敬語が重なっているか、別々の語を「て」でつないでいるかを確かめます。「おっしゃる」はそれだけで尊敬語として働くので、「れる」を足さなくても相手を立てられます。

次の章では、とんでもございませんは間違いかを取り上げます。

参考:国立国語研究所 ことば研究館「『おっしゃられる』のような二重敬語はどのぐらい使われていますか」/文化審議会答申「敬語の指針」

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