のしと表書きの本 第7章
お世話になった人へのお礼は、表書きの言葉選びで迷いやすいものです。「寸志」は、目下の人へお金や品物を贈るときに使う表書きです。ここでいう目下は年齢の差ではなく、公的な関係での上下を指します。第4章でも触れたとおり、年下というだけでは「寸志」の相手になりません。
同じ控えめな言葉でも、「粗品」は相手が目上でも目下でも使えます。これに対して「寸志」は、上の立場から下の立場へ贈る場合に限られます。ちょっとした気持ちを伝えたいときは、「粗品」や「御礼」が向いています。「志」は弔事のお返しに使うのが一般的なので、普段のお礼には使いません。
お世話になった人へ心ばかりのお礼をするときは、のしありの掛紙に紅白五本蝶結びの水引を使います。表書きは「御礼」「謝礼」「謹謝」「薄謝」のほか、目下の人へは「寸志」とします。表書きを入れない無地のしにすることもできます。
「御礼」は、広く使える一般的なお礼の言葉です。「薄謝」は謝礼をへりくだった言い方で、「わずかな謝礼」という意味です。目下の人へ現金で軽いお礼やお返しをする場面で、よく使われます。
葬儀では、お世話になった人へ心付けを渡すことがあります。霊柩車やハイヤーなどの運転手への心付けは、世話役の代表が前もって用意しておきます。渡すのは、火葬場へ出発する前か、火葬場から戻ったときです。金額は3,000~5,000円が目安です。市販の白無地の封筒か、半紙を弔事用にたたんだものに包み、表書きは書かなくてかまいません。
地域ごとの例を集めた調べでは、運転手への心付けは東京で3,000~5,000円、神奈川で3,000円、名古屋で2,000~5,000円とされています。同じ調べでは、火葬の担当者へは東京で5,000~10,000円、神奈川で3,000円、名古屋で3,000~10,000円という例も挙げられています。
僧侶へのお礼は、枕経や納骨経の読経料と通夜・葬儀の分を一つにまとめ、「御経料」か「御布施」として渡します。臨終の立ち会いや枕経から告別式までを一つの区切りとして、ここでいったんお礼をします。精進落としの席を勧めて辞退されたときは、別に「御膳料」を包みます。金額は地域やお寺の格、お寺との付き合いによってさまざまです。僧侶に直接尋ねてもよく、互助会や葬儀社の責任者に相談してもよいとされます。
法要で僧侶に渡すお布施は、白無地の封筒に包んで「御布施」と書きます。檀那寺以外の場所で法要を営むときは、出向いてくれた僧侶に「御車代」を渡します。僧侶が会食を辞退したときは「御膳料」とし、どちらもお布施とは別に包みます。
慶事では、仲人へのお礼もあります。目安は結納金の1割程度といわれ、いまは10万円が常識的な額とされています。これに交通費や実費を加え、祝い膳を用意しないときは酒肴料も添えます。交通費の目安は、近い場合で実費の2倍、遠い場合で実費の5割増しほどです。
仲人へのお礼の祝儀袋は、表書きを「寿」か「御礼」とします。結納の翌日ごろに両家の代表が仲人の家を訪ね、菓子折りなどを添えて渡します。
本書では、のし紙と掛紙の違いから水引の結び方、内のしと外のしの使い分けを見てきました。さらに表書きと名入れ、お供えの掛紙と薄墨、寸志と心付けまでを取り上げました。どの場面でも、贈る目的と相手に合わせて紙と言葉を選ぶことが基本です。
参考:高島屋「粗品・手土産」/高島屋「謝礼」/高島屋「よくあるご質問」/全日本冠婚葬祭互助協会「僧侶・運転手への心づけは?」/全日本冠婚葬祭互助協会「法要の進め方は?」/全日本冠婚葬祭互助協会「仲人へのお礼は?」