引越しの本 第7章
前章では退去立ち会いの確認ポイントを見てきました。旧居の精算が一段落したら、新居で最後に残るのが近所への挨拶です。義務ではありませんが、顔合わせをしておくと、あとで困ったときに声をかけやすくなります。
挨拶の範囲は、地域や建物の慣習で変わります。戸建てでは両隣と向かいが基本になることが多く、集合住宅では同じ階の両隣や上下階まで含める例もあります。管理組合や不動産会社に、入居時の挨拶の慣例があるかを聞いておくと判断しやすいです。
時期は入居直後が一般的です。荷物の搬入が落ち着いた日のうちに伺うと、搬入の物音のお詫びも伝えやすくなります。時間帯は昼間が無難で、夜遅くや食事の時間帯は避けたほうがよいとされています。平日なら午前中から夕方前、休日なら昼食前後を外した時間帯が選ばれやすいです。
手土産を用意する場合は、日持ちする菓子やタオルなど、相手が分けやすいものを選ぶのが実務の目安です。金額に全国共通の正解はなく、地域や関係の深さで変わります。のし紙をつけるときは表書きを「粗品」や「ご挨拶」とし、水引は紅白の蝶結びがよく使われます。袋やのしの有無も地域差があるため、近所の慣習に合わせるのが安全です。
不在のときは、無理に呼び鈴を長く鳴らさず、改めて伺うか、短いメモを残す方法があります。メモには氏名と部屋番号と連絡先を書き、改めて挨拶に来る旨を一行添えると伝わりやすいです。後日改めて伺ったときに、メモの件に触れておくと話がつながりやすくなります。
一人暮らしでは、挨拶をしない選択もあります。強制ではなく、建物の雰囲気や管理の案内を見て決めて構いません。オートロックのマンションで顔合わせが少ない場合や、静かに暮らしたい場合は、最低限の範囲にとどめる人もいます。
引越しの手続きは、契約やライフラインや荷造りや立ち会いまで一通り終えると一段落します。そのあとに残るのが、近所との小さな顔合わせです。手続きの本としてはここまでですが、新しい場所での暮らしは、そこから少しずつ始まっていきます。