引越しの本 第6章
前章では荷造りの順番を見てきました。荷物がまとまって退去日が見えてきたら、最後に控えているのが退去立ち会いです。部屋の状態を貸主側と一緒に確かめ、修繕費や敷金の精算を決める場なので、準備しておくほど話が落ち着いて進みます。
まず押さえたいのは、何を誰が負担するかの線引きです。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)は、年月とともに古くなる経年変化や、普通に暮らしていて生じる通常損耗の修繕費は、家賃に含まれるものとして原則貸主の負担としています。借主が負担するのは、故意や過失、通常の使い方を超える使用で生じた傷や汚れを直す費用です。契約に特約がある場合はその内容も関わりますが、ガイドラインは、通常損耗まで借主に負わせる特約は一定の要件を満たさないと効力が争われうるとしています。
実務では、入居時と退去前に写真や記録を残しておくことが有効です。ガイドラインも入退去時の物件状況の確認をトラブル防止に役立つとしています。立ち会いでは壁や床、設備の傷や汚れ、鍵の返却などを一つずつ確認し、精算書や確認書に署名する前に内容を読みます。よくわからない項目や意見が違う点は、その場で質問し、必要なら書面に残すと後の話し合いに役立ちます。納得できない内容に安易に署名しない姿勢も大切です。
敷金は未払い家賃や借主負担と認められる修繕費などを差し引いたうえで返還される流れが一般的ですが、差し引く金額や時期は契約や地域の慣行で異なるため、全国一律の額を断定はできません。明細の説明を求め、契約書と照合すると確認が進みます。
反論したいときは、消費者ホットラインを通じた消費生活センターへの相談や、法テラスでの窓口案内が手がかりになります。ガイドライン本文も国交省のサイトから確認できます。立ち会いは最後の確認の場なので、記録と契約とガイドラインをそろえて臨むと、話し合いの土台がはっきりします。