降水確率は雨の量を表さない 第6章
天気予報の言葉は、感覚の言い回しに見えて、時間の割合で決まる定義語が多い。「時々」も「一時」も、印象の強弱ではなく、現象がどれだけ続くかの取り決めだ。%以外の語も、物差しは数字に近い。同じ画面に並ぶほど、定義の取り違えが起きやすい。
気象庁の用語では、「時々」は現象が切れ切れに起き、その合計時間が予報期間の半分未満のときだ。切れ目がおよそ1時間以上ある降り方が、断続にあたる。感覚の「ときどき」より、時間の合計が先にある。半分未満、という枠が定義の核になる。切れ切れでも、合計が半分に届かなければ時々の側だ。
「一時」は現象が切れ間なく続き、その発現期間が予報期間の4分の1未満のときだ。切れ目がおよそ1時間未満だと連続として扱う。時刻の「1時」と紛らわしいので、予報文では言い回しを工夫する、という注意もある。短い連続と、切れ切れの断続は、別の語に振り分けられる。4分の1未満が、一時の枠だ。
「のち」は、予報期間の前と後で現象が異なるときの変化を示す語だ。大局の傾向を表すので、可能なら具体的な時間帯に言い換える、と用語の備考にある。FAQでも、時々・一時・のちの三つが同じ並びに置かれている。曇り時々雨、曇り一時雨、曇りのち雨は、この三つで切り分ける。変化の順序がのち、時間の割合が時々と一時だ。
暮らし向けのページでも、断続か連続か、予報期間に占める時間の割合で表現が決まると書いてある。画面の記号では「|」が時々または一時、「/」がのちを示すことがある。記号は概要だけなので、文の定義とセットで読む。マークだけで降り方を決めつけない。文の側に、時間の割合の定義が残っている。
これらの語が示すのは、降り方の時間配分だ。降水確率の%が示すのは、別の軸である。%は量の目盛りではなく、決めた時間に1mm以上の雨または雪があるかどうかの確率だ。降り方の細部も、強さも、この箱には入らない。時々や一時が埋める隙間を、%は埋めていない。有無の確率と、時間の割合は並んで見えるが、中身は違う。
時々と一時は時間の割合、降水確率は有無の確率。どちらも感覚語に見えて、定義の箱を持つ。箱の中身を取り違えると、同じ画面の数字と文言が別の意味に膨らむ。語のラベルを揃えると、数字と文言のズレが減る。感覚で読まず、枠の長さで読む。
降水確率は雨の量を表さない。%は1mm以上の有無の確率であり、量でも強さでも降り方でもない。定義を先に揃えると、予報の言葉が一段読みやすくなる。書名の一文が、全体の入口でもあり出口でもある。
参考:気象庁「天気予報・天気図について」(FAQ)/気象庁「時に関する用語」/気象庁「天気予報」