第2章では、寒さの記録が北海道の地点に集まっている様子を見ました。この章では、表の反対の端に目を向けます。一日のうちで最も下がったときの気温が、どこよりも高かった町はどこでしょうか。
気象庁の歴代全国ランキングを2026年10月時点で見ると、最低気温の高い方からの1位は新潟県糸魚川の31.4度です。起日は2023年8月10日です。この日の糸魚川では、いちばん下がったときでも気温が31度を超えていたことになります。
気象庁がまとめた2023年夏の天候の資料には、この値が時刻とともに載っています。最低気温の31.4度を記録した時刻は24時00分で、その日の終わりにあたります。
同じ資料によると、糸魚川のその日の最高気温は14時22分の39.3度でした。こちらも糸魚川の観測史上1位を更新した値です。この日の最高と最低の差は7.9度になります。
比べる目安として、気象庁の用語では、熱帯夜を「夜間の最低気温が25度以上のこと」としています。気象庁の統計の種目にはない言葉ですが、糸魚川の31.4度はこの25度を6.4度上回っています。
ランキングの2位は新潟県の高田と相川の30.8度で、1位との差は0.6度です。第1章で見た最高気温の1位は群馬県伊勢崎の41.8度で、糸魚川の最低気温との差は10.4度です。
この表には、もう一つ目を引く並びがあります。上位20位までには同じ順位を含めて23地点が並び、そのうち9地点の起日が2023年8月10日です。
内訳は、新潟県が糸魚川・高田・粟島の3地点、鳥取県が境・米子・塩津・湖山の4地点です。残りの2地点は島根県の松江と愛媛県の松山です。前日の8月9日の記録としては、島根県の斐川の30.2度も入っています。
では、東京はどこにいるのでしょうか。東京の観測史上1位の値は30.4度で、2013年8月11日の記録です。順位は7位で、同じ30.4度の沖縄県石垣島と松江、米子と並んでいます。
この表では、値が同じなら起日の新しいほうが上に来ます。そのため、4地点のなかで起日が最も古い東京は、いちばん下に置かれています。
2023年8月について、気象庁の資料はこう説明しています。この月は北日本を中心に暖かい空気に覆われることが多く、台風第6号と第7号の影響で南からも暖かい空気が入りやすい状態でした。日本海側ではフェーン現象も起きたとあります。
フェーン現象は、気象庁の用語では、湿った空気が山を越えるときに雨を降らせたあと、山を吹き降りて乾き、気温が高くなる現象などを指します。
ただし、資料はこれらを8月の月平均気温が高かった理由として挙げています。糸魚川の記録は同じ段落に別の文で書かれていて、どの要因によるものかまでは書かれていません。
同じ資料によると、2023年の夏には全国915地点のうち248地点で、最低気温の高い方の観測史上1位が更新されました。最高気温の高い方の更新は128地点で、どちらもタイ記録を含む数です。この夏は、最高気温よりも最低気温の高さで記録を塗り替えた地点のほうが多かったのです。
ここまでは気温の記録を見てきましたが、日本一の記録は気温だけではありません。次の章では、一日に降った雨の量の記録へ進みます。
参考:気象庁「歴代全国ランキング」/気象庁「夏(6~8月)の天候」2023年 別紙/気象庁 予報用語「気温、湿度」