再会はコインランドリーで

夜のコインランドリー。丸い窓の乾燥機が並び、洗濯物がまわる。ベンチに並んで座る二人の後ろ姿。

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終電のあと、家の洗濯機が壊れたことに気づいたのは、午後十時を過ぎた頃だった。仕方なく、駅の近くの二十四時間営業のコインランドリーへ向かうと、自動ドアが開いたとたん、あたたかい空気と柔軟剤の匂いが顔にあたった。奥の乾燥機の前に、誰かが座っている。大きなトートバッグを膝に置いて、スマートフォンを見ていたその人が顔を上げ、わたしは足を止めた。

「……あれ、真帆?」

相手も同じ顔をしていた。十年前、同じ高校の隣のクラスだった、遼太郎だった。

*

偶然というのは、あるものだ。遼太郎は三か月前にこの街へ引っ越してきたという。わたしは六年前からここに住んでいて、同じ駅の反対側の出口の、数百メートル先に、お互いが住んでいたことになる。

「十年ぶりなのに、あんまり変わらないね」と遼太郎が言った。

「そっちこそ」とわたしが返すと、あっさり昔の調子が戻ってきた。洗濯機に洗濯物を入れてコインを入れ、スタートボタンを押して、乾燥機の前の椅子に腰を下ろす。洗濯が終わるまで四十分。話題は尽きなくて、高校の担任の口癖や、体育祭の借り物競走や、遼太郎が一度だけ授業中に居眠りして先生に当てられた日のことを、順番に思い出していった。

「あの日、真帆が後ろの席から、答えを小声で教えてくれたよな」

「そうだっけ。覚えてないなあ」

本当は、よく覚えていた。あの日わたしは、少しだけ勇気を出したのだ。

*

洗濯機が、ぴー、と鳴った。四十分はあっという間で、洗い終わった洗濯物を乾燥機に移しながら、次の四十分もこのままここに座っていたいと思った。

「乾燥機、いっしょに待とうか」

遼太郎が言った。わたしの心を読んだみたいだった。わたしたちは並んで座り、乾燥機の中で洗濯物がゆっくりとまわるのを、ごとん、ごとんという柔らかな音を聞きながら眺めた。

「実はさ」遼太郎がためらうように言った。「高校のとき、真帆に言いたいことがあったんだ。結局言えなかったけど」

わたしは膝の上の手をぎゅっと握った。

「それ、いま聞いてもいい?」

遼太郎は笑った。耳が少しだけ赤かった。

「いまは、まだ洗濯物がまわってるから。乾燥が終わったら言うよ」

乾燥機の残り時間は、あと三十五分。窓の外では、夜の街の灯りがぼんやりとにじんでいる。わたしは、時間がもう少しだけゆっくり進めばいいと思った。それから、そう思うことがちっとも怖くない自分に気づいた。

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