受付は会場の入口に長机を一つ出しただけで、椅子は二脚しかなかった。幹事の美月から預かったのは、名簿と、釣り銭用の五千円札十枚と、黒いペンだった。隣に座った男の人は新郎の高校の同級生だそうで、私より先に来て、席札の束を机の端で叩いて揃えていた。私は美月の大学の友達で、新郎のことは名前しか知らない。
「会費は五千円ですよね」と彼が言った。
「はい。一万円の人には五千円を返します。名簿は二十六人ですけど、二人は欠席で」
「じゃあ二十四人」
「二十四人です」
彼は自分のペンを持っていなかったので、私の黒いペンを貸した。名簿の欠席の二人に、定規もなしでまっすぐな線を引いて返してくる。字は角ばっていて、席札の書き足しも同じ字だった。足りなかった三枚を書き終えると、彼はキャップを私のほうへ向けてペンを置いた。
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六時半を過ぎると、人が続けて来た。一万円札を出す人が多く、そのたびに私は五千円札を一枚ずつ指で数えて返す。彼は受け取った札の向きを揃えて、一万円札と五千円札を別々の封筒へ入れていった。数え方も違っていて、彼は十枚ずつ折り曲げて親指で弾くので、私の数える音より速かった。
七時の少し前に最後の一人が来て、受付を閉めた。机の上に二つの封筒を並べて、順番に数える。
「一万円札が九枚です」
「五千円札は十六枚」
「九万円と八万円で、十七万円」
「こっちも十七万。釣り銭の五万を引いたら」
「十二万円です」
「二十四人かける五千円で、十二万円。合ってますね」
彼は封筒の口を折って、折り目を爪でなぞった。釣り銭の元手だった五千円札十枚は、別の小さな封筒に戻して輪ゴムをかけた。私は美月が持たせてくれた複写の預り書を出して、金額の欄に十二万円と書いた。受取人の欄の手前で、手が止まった。
「そういえば、お名前をまだ聞いていませんでした」
「森下です。森林の森に、上下の下」
「名簿で見ました」
「僕も、さっき見ました」
預り書は受付担当の二人の連名にすることになっていた。私が自分の名前を書いて、ペンを渡す。彼は森下と書いてから、下の画数が少ないことを確かめるように、ペン先でもう一度なぞった。キャップを閉めてから、向きを揃えて私の前に置く。
「封筒、糊づけしますか」
「しません。美月の前で開けて、数え直してもらうので」
「それなら、数え直すとき呼んでください。十枚ずつなら、僕のほうが早いです」
