むかしむかし、森のはずれに、こんという名前の子ぎつねが住んでいました。
ある晩、こんは池のほとりで、丸くて白いものを見つけました。手に取るとひんやりしていて、ほんのり光っています。
「わあ、きれいだなあ。ぼくの宝物にしよう」
こんはそれを抱えて巣穴に帰り、ふかふかの葉っぱのベッドに置きました。すると、巣穴の中がぱあっと明るくなりました。
まっくらになった森
ところが次の晩から、森は真っ暗になりました。ふくろうは、えさのありかが分からなくなって木にぶつかり、うさぎは自分の巣を間違えて、くまの家に入ってしまいました。ほたるでさえ、お互いの光が見えずに、ぶつかってばかりいます。
「どうしてこんなに暗いんだろう」
「だれかが、あかりを取ってしまったのかなあ」
そのとき、巣穴の中で、こんはどきんとしました。拾った白いものをのぞきこむと、それは、空に浮かんでいるあの月だったのです。
「たいへん。ぼく、月をぬすんじゃった」
いちばん高い山へ
こんは月を抱えて、夜の森へかけ出しました。いちばん高い山のてっぺんまで登りましたが、空はずっと遠くて、どんなに背伸びをしても手が届きません。
「だめだ。ぼく一人じゃ、できない」
こんがぽろぽろと泣いていると、後ろから、のっしのっしと足音がしました。くまです。
「泣くな、こん。おれの肩に乗れ」
くまの肩にさるが乗り、さるの肩にりすが乗り、いちばん上に、こんがつま先立ちで乗りました。まるで長いはしごのようです。こんが月を両手でそっと持ち上げると、月はふわりと手を離れて、空のいつもの場所に、ぴたりとおさまりました。
みんなで見た月
森じゅうが、やさしい光に包まれました。ふくろうは「ほう」と喜び、うさぎはぴょんと跳ね、ほたるたちは光をそろえて、ちかちかとまたたいています。
「ありがとう、こん。それから、みんな。いっしょにわたしを見つけてくれて」
月が空の上からささやきました。その晩、こんは生まれて初めて、みんなと並んで月をながめ、そのまま、ふかふかの草の上でぐっすり眠りました。月はひと晩じゅう、森をやさしく照らしていました。
おしまい
