図書館は何を借りたか外に出さない 第3章
『図書館は何を借りたか外に出さない』の目次:図書館は何を借りたか外に出さない
図書館で残る足あとは、貸出の一行だけではない。借りずに閲覧席で読む日もある。棚にない本を予約することもある。カウンターで、ある病気について調べたいと相談することもあるだろう。本を一冊も持ち帰らずに、帰っていく日もある。どれも、その人が何に関心を向けたかを映している。貸出記録には残らなくても、中身の重さは変わらない。宣言の第3は、ここにも線を引く。その2は「図書館は、読書記録以外の図書館の利用事実に関しても、利用者のプライバシーを侵さない。」である。読書事実と利用事実は、二つに分けて書かれている。何を読んだかだけを囲っても、図書館をどう使ったかが漏れれば、同じことが起きるからだ。調べものの相談ひとつで、その人の事情はかなり見えてしまう。
日本図書館協会は2019年、デジタルネットワーク環境での図書館利用のプライバシー保護ガイドラインを出した。その注には、宣言が読書事実と利用事実を切り分けている、と確かめる一行がある。ガイドラインは、個人情報と利用情報がどんな場面で集まるかを整理している。図書館システムでは、貸出や返却に加えて、予約やリクエスト、調べものの相談の記録も挙がる。入退館の記録や、施設や閲覧席の利用も含まれる。館内のパソコンや、図書館のWebサイトの利用も別の場面として立っている。並びを見ると、図書館の使い方にはいくつもの種類があると分かる。利用者が記録の名前を覚える必要はない。こうした情報を集める目的は資料管理だ、と明記されている。何をどんな目的で集めるかは、事前に示して同意を得る必要がある、とも続ける。個人情報を集めるときは、サービスに必要な最小限の項目にとどめる、という一文もある。
ここで、怖がる方向へ話を進める必要はない。情報の種類を並べるのは、監視の広さを見せるためではない。守るべき範囲を、図書館の側が把握するためだ。ガイドラインは、どんな状況でも図書館は図書館利用のプライバシー保護に責任をもたなければならない、という一文を置く。館種や運営の形は問わない。注によれば、公共図書館に限らず、学校図書館や大学図書館、専門図書館まで含まれる。運営を委託している図書館でも同じだ。宣言そのものは、協会が掲げ、多くの図書館が拠り所にしてきた原則であって、法律の条文ではない。それでも、貸出の一行から閲覧席の利用までを同じ約束のなかに入れた点に、宣言の考え方が出ている。知る自由は、本を借りた瞬間だけで働くものではない。探す、迷う、尋ねる、という手前の動きも含めて、図書館の使い方は守られる側にある。
参考:日本図書館協会「図書館の自由に関する宣言」/日本図書館協会「デジタルネットワーク環境における図書館利用のプライバシー保護ガイドライン」
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