「残さない」と「外に出さない」は同じではない

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図書館は何を借りたか外に出さない 第6章

『図書館は何を借りたか外に出さない』の目次:図書館は何を借りたか外に出さない

ここまで読んできた秘密は、外に出さないという約束だった。ただ、外に出さなくても、記録が館の中に長く積もっていけば別の心配が生まれる。そこで、持たないという層がもう一つある。日本図書館協会は1984年、貸出業務にコンピュータを入れることに合わせて、個人情報を守るための基準を定めた。2019年のガイドラインは、図書館が従来、本が返されれば利用の履歴を消してきたと振り返っている。約束は一度で書き終わったものではない。道具が変わるたびに、書き足されてきた。

ガイドラインの4は、まず原則を置く。必要最小限の情報を、必要最短の期間だけ持つ。集め方や管理の仕方、いつ消すかを館ごとに定めて、公開する。そのうえで、利用者の情報は永く保管しない、と続く。貸出や予約が終わったら、保管期間を決めたうえで、利用者と利用の結びつきを確実に解く。保管期間を終えたデータは、速やかに消す。利用者の情報を図書館の外に持ち出さない、という一項もある。統計のために数字を残すなら、個人を匿名化して結びつきを切る。館内で利用者が使うパソコンも、一人の利用が終わるたびに履歴などが消えるよう設定する、とある。一方で、ガイドラインは理想だけを並べているわけでもない。システムを安定して動かすにはログが要る。紐づけを解いたあとに痕跡をまったく残さないことは、不可能に近いと認めている。だからこそ、持つものを減らし、持つ期間を短くするという原則が前に出る。

借りた本の記録を、自分で見返したい人もいるだろう。ガイドラインはそれを否定していない。マイページや読書通帳のように、資料管理の範囲を超えるサービスについては、導入するなら館内で慎重に検討し、十分な安全対策をとるよう求めている。貸出履歴や検索履歴を活かすサービスは、希望する人だけが選ぶ方式にする、と5の(4)に書かれている。選ぶ前に、どんな情報がどう使われ、どんな危うさがあるかを十分に説明する。その説明はいつでも見られるようにしておく。やめたいときにはいつでもやめられて、その間に集めた情報は破棄する。何を集め、何のために使い、どれくらいの期間持つのかを、利用者が容易に知れるようにすることも求められている。持たないことを原則にしたうえで、持つかどうかを本人が決める余地を残した形だ。宣言は協会が掲げる原則で、ガイドラインも協会の文書だ。どちらも法律ではない。それでも、外に出さない約束と、持ち続けない約束は、別々の層として書き分けられている。本を気軽に借りられる便利さの裏には、知る自由のための約束が重なっている。

参考:日本図書館協会「デジタルネットワーク環境における図書館利用のプライバシー保護ガイドライン」/日本図書館協会「図書館の自由に関する宣言」

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