図書館は何を借りたか外に出さない 第5章
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読書事実を外部に漏らさない、と書いた宣言の第3の1には、ただし書きが続く。本文は、読者が何を読むかはその人のプライバシーに属する、という一文から始まる。そこまで言い切ったすぐあとに、例外が置かれている。「ただし、憲法第35条にもとづく令状を確認した場合は例外とする。」利用者の秘密を守るという第3のなかで、例外として名前が挙がるのはこれだけだ。この第3は、1979年の宣言改訂で主文に加わった。照会を受けたとき、とは書いていない。必要だと言われたとき、でもない。相手の肩書きや、求める側の熱心さで線が動くような書き方はしていない。条件は令状であり、しかも図書館の側がそれを確認した場合に限っている。確認という語が入っていることで、令状があると聞いただけでは足りない、という読み方が自然になる。
では、憲法第35条は何を定めているのか。骨格は短い。誰でも、住居や書類、所持品について、侵入や捜索、押収を受けない権利をもつ。その権利は、第33条の逮捕の場合を除いて、正当な理由にもとづいて発せられ、捜索する場所と押収する物を明示した令状がなければ侵されない。捜索や押収は、権限をもつ司法官憲が発する各別の令状によって行う、とも続く。場所と物を明示することが条件なので、求められる範囲は令状の文面で決まる。憲法は国の法であり、宣言は日本図書館協会が掲げる原則である。この二つは性格が違う。宣言は、自分で例外の線を考え出したのではない。憲法がすでに引いている線を、そのまま例外の条件に借りている。図書館が独自に判断して開ける扉を作らなかった、とも言える。
2019年のプライバシー保護ガイドラインも、同じ方向を向いている。利用者の同意や裁判所の命令がないまま、利用者情報を第三者に渡してはならない、とある。クラウドのように、外部の業者がシステムを運用する場合にも触れている。業者には公務員と同等の厳格な守秘義務を課し、すべてのデータの所有者は図書館とする。利用者の情報は、匿名化したとしても第三者への提供を認めない。業者が捜査のための情報提供を求められたら、すみやかに図書館へ報告させる。捜索差押許可状の提示がなければ、情報の提供は認めない。記録を預ける先が館の外にあっても、外に出す条件は変えないということだ。ガイドラインもまた協会の文書であって、法律ではない。それでも、館の内と外で基準をそろえようとする姿勢ははっきりしている。記録をどれだけの期間、どんな形で持つのかは、これとは別の問題として残る。例外が一つだけ、はっきり書かれている。そのことが、普段は外に出さないという原則をいちばん強く示している。
参考:日本図書館協会「図書館の自由に関する宣言」/日本図書館協会「デジタルネットワーク環境における図書館利用のプライバシー保護ガイドライン」/e-Gov法令検索「日本国憲法」