日本の海は国土の十二倍ある 第3章
第2章までで見てきた領海の幅は、原則として基線からその外側へ12海里です。第1章の約12倍の話の土台にもなる帯の幅です。海上保安庁の用語ページでは、12海里は約22kmと換算されています。領海及び接続水域に関する法律の第1条も、基線からその外側十二海里の線までの海域を我が国の領海とする、と明記します。同じ「領海」という名前でも、場所によってその幅がはっきりと違う箇所があります。
同法の附則が、十二海里の例外を置いています。附則は当分の間、宗谷・津軽・対馬海峡の東西水道・大隅の各海峡について、本則の十二海里を当てはめないと書きます。隣接地で通常の航路から一体とみなせる海域も含め、これらを特定海域と呼びます。そこでの領海は、基線から外側三海里の線と、それに続く線までの範囲に限られます。
三海里は十二海里の四分の一であり、用語ページの約22km換算より短い帯になります。国際航路の海峡で領海を狭く残している、という制度上の事実が附則の条文に書いてあります。いまの附則にその五つの海域名がそのまま列挙されている、というところまでがここまで触れる範囲です。幅の原則と例外が、同じ法律の本則と附則のなかに並んで書かれています。
特定海域の範囲と、三海里の線および接続して引かれる線については、附則のとおり政令で定めます。領海及び接続水域に関する法律施行令は、特定海域の範囲を別表第二の中欄に掲げる海域とする、と書きます。別表第二には宗谷・津軽・対馬海峡東水道・対馬海峡西水道・大隅のそれぞれについて、範囲の線が示されています。海上保安庁の「特定海域に係る領海」のページでも、五つの海峡に特定海域があり、領海の幅は基線から外側3海里とその接続線までだ、と案内されています。
同じ領海という枠のなかでも、原則の12海里と特定海域の3海里という二通りの幅が並びます。地図の陸の線から同じ距離だけ沖へ一様に広がるわけではない、という点で第1章の地図の錯覚とまたつながります。幅の違いもまた、陸のシルエットだけでは捉えにくい制度の区画です。海峡の固有名が附則の条文に残っていること自体が、場所ごとの領海の幅の差を示しています。次に見るのは、さらに外側へ広がる区画が領土の主権そのものとは別だ、という区切りの話です。
参考:e-Gov「領海及び接続水域に関する法律」/同施行令/海上保安庁「特定海域に係る領海」/海上保安庁「領海等に関する用語」
前の章:領海だけでも国土より広い