コインランドリーの待ち時間

雨の日の昼のコインランドリー店内。並んだ乾燥機の丸い窓の中で青いタオルが回り、壁際の長椅子の端に表紙の丸まった単行本が一冊置かれている。入口のガラス越しに雨の街路。人物は描かない。文字は描かない(機械の表示・看板・本の表紙も無地)。

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雨は四日続いていた。ベランダのタオルは乾くどころか、部屋の湿気を吸って重くなる一方だった。土曜の昼過ぎに観念して、シーツとタオルをバッグへ押し込み、近所のコインランドリーへ向かった。傘を持つ手も塞がっているので、バッグの持ち手が肩に食い込む。

一番奥の乾燥機を選び、百円玉を四枚入れた。四百円で四十分。ボタンを押すと、ドラムが低く唸って回り始める。丸い窓の向こうで、青いタオルとシーツが上になり下になりしていた。壁の時計は二時十分。終わるのは二時五十分だ。空気には洗剤の甘いにおいと、乾いた布を焼くような熱のにおいが混じっている。四日分の雨を、ここで一度に追い出す気分だった。

店には先客が一人いた。壁際の長椅子の端で、スーツの上着を脱いだ男性がスマホを見ている。私は反対の端に腰を下ろした。間に三人分の空きがある。そこへ後から来た女性が、迷わず真ん中に座った。広い店で一番混んだ席を選ぶ人がいる。私は膝の上のバッグを少しだけ引き寄せた。

椅子の端に、漫画の単行本が一冊置かれていた。表紙の角が丸まっていて、十二巻とある。一巻も読んでいない私には荷が重い。それでも手に取って開くと、主人公が雨の中で誰かを待っていた。雨の日に雨の話を読み、洗濯物を待つ。我ながら芸がない。

ふと丸い窓を見ると、回るたびに私の靴下が顔を出した。かかとに穴が開いている。他人の洗濯物を見ないようにしているのに、自分の穴だけは見えてしまう。隣の台では、男性のワイシャツが同じ向きにぐるぐる回っていた。目が合う前に、漫画へ視線を戻した。

店の奥では、大型の洗濯機が脱水に入っていた。床が細かく震えて、足の裏までその振動が届く。自動ドアが開くたびに雨音が流れ込み、閉まるとまた遠のく。誰も口をきかない。聞こえるのは乾燥機の風と、私がめくるページの音くらいだった。

残りが五分を切るころ、ドラムの回転が落ちてきた。ごとん、ごとん、と間隔が開いていく。女性はスマホを伏せて立ち上がり、男性も上着を腕にかけた。みんな同じ音を待っている。

ブザーが一度だけ鳴った。扉を開けると、顔に熱気が当たる。シーツの端は指先で摘まむほど熱く、日向の布団のにおいがした。タオルを抱え込むと、胸の真ん中までじんわり温かかった。

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