死神の採用面接

白い壁の殺風景な会議室。長机の手前側に応募者用のパイプ椅子が一脚、向かいに黒い革の椅子。机の上に一枚の履歴書と黒いボールペン、紙コップのお茶が二つ。窓はなく天井の蛍光灯だけ。人物は描かない。書類に文字は描かない(無地)。

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白い会議室に長机が一つあって、向かいには黒いスーツの面接官が座っている。名札には「主任」とだけある。私は前の会社の癖で名刺を出しかけ、渡す相手が人間でないことに気づいて手を引っこめた。

「では、志望動機からお願いします」

「はい。前職では営業事務を十一年やっておりました。毎日お客様のご都合に合わせる仕事でしたが、次はご都合のつかない方のお役に立ちたいと考えました」

「ご都合のつかない方」

「はい。お世話になっております、から始まる関係を築きたいです」

「うちの担当の方は、挨拶しても返事をくれませんよ」

「返事がなくても、三回は送ります」

「送らなくていいです」

「長所を教えてください」

「確認を怠らないところです。メールは送信前に必ず三回読みます」

「短所は」

「持ち帰って検討します、と言ってしまうところです」

「持ち帰る先が、うちにはないんですよ」

「では、その場で検討します」

「そうしてください」

*

主任は履歴書に何か書きこんだ。字が細かくて、私の席からは読めない。

「担当件数ですが、一日四十件前後です。移動を含めて一件七分」

「四十件に七分ですか。引き継ぎの時間は」

「引き継ぎは書類一枚です。先方への説明はありません」

「書類は得意です。前の会社では、会議のたびに議事録を取っていました」

「取らなくていいです」

「取らないと落ち着かなくて」

「では、取って、出さないでください」

「それだと、取る意味が」

「ないですね」

「上司への報告は、どのくらいの頻度ですか。前職では一時間おきに入れていました」

「こちらの上司は私です。報告は結構です。連絡も結構です」

「相談は」

「相談は、私がしたいくらいで。特技はありますか」

「定時の五分前から、帰る準備をする早さです」

「それは、定時に帰れる人の特技です」

「前の会社では、準備だけで終わっていました」

「ここでも、そうなる気がします。勤務は夜が中心で、残業もあります」

「残業代はつきますか」

「つきません」

「慣れています」

「慣れないでください」

主任は初めて顔を上げた。目の下に濃いくまがある。

「御社の一日の流れも伺えますか」

「夕方に出勤して、朝まで担当先を回ります。休憩は、移動の途中で各自」

「各自、ですか」

「全員が回っているので、休憩室に誰もいません。最後に、何かご質問はありますか」

「では一つ。前任の方々は、どうして辞められたのでしょう」

「辞めてはいません。有給の消化に入ったまま、三人とも戻ってこないだけで」

「それは、辞めたのと」

「違います。書類の上では在籍中です」

主任は私の履歴書を、もう一度裏返した。

「あの、このあとご予定は。靴はそのままで構いません。四十件のうち、まずは半分だけでも」

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