日本は一度、夏時間をやめている 第5章
『日本は一度、夏時間をやめている』の目次:日本は一度、夏時間をやめている
始まりを五月に移しても、不満は消えなかった。1951年(昭和26年)、政府は国民に直接尋ねることにした。内閣府の世論調査のページに、その「サンマータイムに関する世論調査(昭和26年9月調査)」が載っている。
調査の概要は、目的をこう書いている。施行以来四か年がたち、国民が経験を重ねるにつれて「漸くこれに対する批判の声も高くなって来た」。そこで政府は、国民の意見と態度をつかみ、「国会における検討のための資料」を準備する必要があった。
- 期間:1951年9月28日〜10月15日
- 対象:満20才以上60才未満の日本人男女
- 方法:調査員による面接聴取
- 有効回収:2,485人(90.3%)
最初の質問は、来年のことを聞いている。
「サンマータイムについてどう思いますか。来年もつづけた方がよいと思いますか。それとも,今年でやめた方がよいと思いますか。」
答えは「やめた方がよい」53%、「続けた方がよい」30%、「あってもなくてもよい」15%だった。
やめたい理由で上位に来たのは次の三つだ(複数回答。三つ目と同じ16%で「生活に無関係」も並ぶ)。
- 「農(漁)村生活にぴったりしないし,つい労働過重になる」26%
- 「慣習を変更されることを好まない」22%
- 「保健上よくない(疲れてだるい)」16%
続けたい側にも理由はあった。いちばん多いのは「労働条件や民間企業に好影響(能率が上る)」25%で、「余暇を利用できる」21%が続く。やめたい側にも「労働条件や民間企業に悪影響」が10%あり、労働条件は賛成と反対の両方の理由に出てくる。
理由を並べると、同じ項目が両側に現れる。保健では「保健上よくない(疲れてだるい)」が16%、「保健上よい」も16%。農漁村では、やめたい側の26%に対して、続けたい側の「農(漁)村生活や農業経営上よい」は12%だった。制定のときに二つ目の利点とされた電力は、続けたい理由としては、電力(石炭)の消費が少なくてすむ、という1%にとどまる。
調査は、期間を短くする道も探っている。この年の夏時刻は五月のはじめから九月のはじめまでだった。やめたい人に、期間を短くすればどうかと聞くと、「期間を短くしても反対」が78%。続けたい人に期日を聞くと、「今まで通り」が85%だった。両側とも、期間の長さで歩み寄る余地は小さかった。
やめたい人には、サンマータイムを利用したかどうかも聞いている。「全然利用しない」が59%、「少しは利用した」が35%だった。
続けたい人にも、主に何に使ったかを聞いている。いちばん多いのは「利用しない」の27%で、「作業量・能率の増大」24%、「家事(菜園,裁縫等)」21%が続いた。
同じ秋、国会にも声が届いていた。1951年11月26日の衆議院労働委員会には、夏時刻法の廃止に関する陳情書がかかっている。要旨は、夏時間が「さなきだに短い夏の夜」をさらに短くして睡眠の不足を招き、児童生徒の心身の過労をきたし、発育保健上弊害があると思われる、というもので、明年からの全廃を求めていた。
調査の目的に書かれた「国会における検討」は、翌年の春に始まる。今度は始まりの時期ではなく、法律そのものをやめるかどうかが問われた。
参考:内閣府「サンマータイムに関する世論調査(昭和26年9月調査)」/国会会議録検索システム「第12回国会 衆議院労働委員会 昭和26年11月26日」
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