星見坂の下宿 第8話 母が来た夏

屋根裏の天窓の下に並んで座る母と娘の後ろ姿。夜空に流れ星。

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連載「星見坂の下宿」第8話/全10話(完結) 約2分で読めます

八月の初め、ひなたの母が星見荘を訪ねてきた。大きな荷物と保冷バッグを両手に提げて、坂の下からゆっくり上ってくる。ひなたは門の前で手を振った。

「お母さん、こっち」

母は息を切らしながら顔を上げた。

「あんた、こんな坂のてっぺんに住んでるの。毎日大変でしょう」

「慣れたよ。意外と楽しいんだ」

*

トメさんが玄関で母を迎えてくれて、二人はすぐに打ち解け、お茶を飲みながら世間話に花を咲かせた。母が持ってきた手作りの梅干しと干物は、星見荘の全員に配られた。夜は、みんなで母の持参した魚の夕食を囲んだ。凛さんも葉山さんも、母にあれこれとひなたの様子を話してくれる。

「この子、最近毎晩、屋根裏で星を見てるんですよ」と凛さんが言うと、母は目を丸くしてひなたを見た。

「あんたが。星を」

「うん。お母さんにも見せたいって、手紙に書いたでしょう」

八月十二日の夜は、ペルセウス座流星群が極大をむかえるとされる日だった。ひなたは母の手を取って、屋根裏の梯子を上った。

*

ドームの天窓を開けると、夜空には満天の星が広がっていた。母は屋根裏の床に座りこんで、空を見上げる。

「わあ。こんなに星があるの」

しばらく二人は黙って空を見ていた。そのとき、ひとつ、すうっと白い線が空を走り、母が小さく声をあげた。

「流れ星」

「うん。今夜はたくさん流れるんだって」

二つ、三つと星が流れていく。母は目をきらきらと輝かせていて、それは、ひなたが子どものころに見た母の笑顔と同じだった。

「お母さん、願いごとした?」

「した。あんたが元気で、毎日楽しく暮らせますように」

ひなたは胸がいっぱいになって、母の隣で肩を寄せた。

「わたしもした。お母さんがずっと元気でいてくれますように」

母はひなたの頭をくしゃくしゃと撫でた。

「なに言ってるの。まだまだこれからよ」

夜空には星が流れつづけていて、二人はいつまでも肩を並べて、空を見上げていた。

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