十八歳で成年でも酒は二十歳 第1章
十八歳で成年なのに、酒は二十歳。感覚では「大人=酒」が一本線に見える。制度の側は、そう一本にはなっていない。民法では十八歳で成年なのに、飲酒の禁止年齢は二十歳のままだ。書名どおりの対比が、最初から立つ。感覚と制度のあいだに、すき間がそのまま残っている。
法務省のQ&Aでも、同じ趣旨が先に並ぶ。成年年齢を十八歳へ動かしても、お酒の年齢制限は二十歳のまま残る、と答えている。健康被害への懸念などの観点から、従来の年齢を保つ、という説明だ。成年の線と、飲酒の線は別物として置かれている。引下げの話と、解禁の話は同じではない。成年になったから飲める、という読み方は、制度の地図に合わない。お酒やたばこが十八歳で解禁されるのか、という問いに対する答えも、二十歳のまま、だ。
飲酒の側の文言は、はっきりしている。二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律第1条は、「二十歳未満ノ者ハ酒類ヲ飲用スルコトヲ得ス」と書く。二十歳未満の者が酒類を飲用してはならない、という意味だ。成年かどうかとは別の禁止線である。条文は、成年の定義を参照しない。年齢の数字だけを置く。禁止の根拠は、民法の成年条項ではない。
成年の側は、民法第4条だ。同条は、年齢十八歳をもって成年とする、と定める。切替日や生年月日の線の詳細は、この章では扱わない。ここで押さえるのは、成年の入口が十八歳だという事実だけだ。明治以来長く二十歳だった成年年齢が、十八歳へ動いた。飲酒の禁止年齢は、その動きに合わせて下がらなかった。二つの線は、同じタイミングで一本化されたわけではない。
感覚の一本線と、制度の二本線は噛み合わない。十八歳、十九歳は民法上の成年でありながら、飲酒の禁止年齢にはまだ届かない。「まだ飲めないのに大人」は例外ではなく、線が二本あることの表れだ。たばこや公営競技など、二十歳のままの線もある。ギャップに見えるものは、制度が別々に引いた線だ。一本に見える感覚は、後から重ねた読み方に近い。
政府広報も、成年になっても飲酒は二十歳にならないとできない、と並べている。変わるものと変わらないものが、同じページに並ぶ。成年年齢の引下げは、飲酒年齢の引下げではない。対比の骨格は、そこにある。十八歳で「大人」でも、酒の入口は二十歳のまま残る。変わる欄と変わらない欄が分かれている。成年のラベルと、酒の入口は一致しない。
十八歳で成年でも酒は二十歳。この書名どおりの対比は、感覚のズレではなく制度の設計そのものだ。一本の感覚で読むとずれ、二本の線で読むと地図がつながる。まだ飲めないのに大人、はルール違反の例外ではない。制度が二本の線を引いている。その地図を、あらかじめ押さえておきたい。
参考:法務省「民法(成年年齢関係)改正 Q&A」/e-Gov法令検索「民法」/e-Gov法令検索「二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律」/政府広報オンライン「18歳から“大人”に!成年年齢引下げで変わること、変わらないこと。」
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