法令の名は中央標準時という

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日本標準時は東経百三十五度 第4章

時計の数字を、多くの人は日本標準時と呼ぶ。略してJSTとも書く。英語の頭文字も、日常の側に属する。情報通信研究機構(NICT)は、自らが作り通報する標準時の名称を日本標準時だと説明する。日常の言葉は、この通報の側に近い。ニュースも時計も、まず日本標準時と言う。法令の側は、別の名前を使う。明治二十八年勅令第百六十七号は、帝国従来の標準時を自今中央標準時と称す、と定める。住所の経線は東経百三十五度のままだ。変わるのは呼び方だ。経度の数字は動かない。名前の札が付け替わる。札の文字が中央標準時になる。感覚の名前と、勅令の名前が並ぶ。同じいまを指しても、看板が一つではない。書名の日本標準時も、日常の側の言葉に近い。耳に残る語と、条文に残る語は、役割が違う。片方を消しても、もう片方が自動で条文に書き換わるわけではない。

NICTのQ&Aは、はっきり置く。日本標準時という語は、法令の文言には出てこない。法令に表れているのは、明治十九年と明治二十八年の勅令で、東経百三十五度の子午線の時を中央標準時とする、という整理だ。標準時という語はあっても、日本標準時という語は法令の欄には乗らない。だから日本標準時は非公式だ、と煽る必要はない。通報の実務名と、勅令上の名が並走している、という地図で足りる。一方が偽物で、他方が本物、という対立にはしない。非公式批判の材料にもしない。層が違う。優劣の順位表を作る話ではない。耳に入る名前と、条文に残る名前だ。日常が通報名を使い、法令が中央標準時を使う。どちらも、東経百三十五度の時を指す読み方の一部だ。名前が二つあることは、住所が二つあることではない。住所は一本の経線のまま、看板だけが二つ並ぶ。

だれが標準時を知らせるかも、短い一行で足りる。総務省が標準時の通報などに関する業務を担い、NICTが標準時を生成して通報する。組織の年表を長く追う必要はない。知らせる主体の一行で地図は閉じる。核は名前の二本だ。住所の一本と、看板の二本は別の数え方だ。日常語の日本標準時。法令語の中央標準時。同じ東経百三十五度の時を指しても、看板が二つある。並走を対立に読み替えない。通称と法令名が、同じ地図の別の欄にある。欄を混ぜると、非公式という誤解が生まれやすい。実務の名と勅令の名が、並んでいるだけだ。法令の名は中央標準時という。日本標準時は、NICTが知らせる側の名称だ。法令の名は中央標準時という。二つの看板は、同じいまの別の呼び方にすぎない。

参考:情報通信研究機構「標準時・周波数標準のQ&A」/e-Gov法令検索「明治二十八年勅令第百六十七号(標準時ニ関スル件)」/情報通信研究機構「日本標準時」

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