森の秋の終わり、りすの郵便屋さんはいつもより早く起きました。きょうは一年でいちばん大事な配達の日です。冬が来る前に、森のなかまたちへ「ふゆじたくのお手紙」を届けるのです。りすはかばんに手紙をいっぱいにつめて、ぱんぱんになったかばんを肩に、ひげをぴんと立てて、いざ出発。
くまさんへ
最初にとんとんとノックしたのは、くまさんの洞穴でした。
「くまさん、お手紙です」
くまさんは眠そうな顔で出てきて、手紙を開きました。
ふゆじたくは、すみましたか。ふかふかのわらを、もう一枚。あたたかく、おやすみなさい。
「ありがとう、りすさん。ちょうど、わらが足りなかったんだ」
くまさんはあくびをして、洞穴の奥からもうひとつ、わらを抱えてきました。
うさぎさんへ
次は、うさぎさんの巣です。手紙にはこう書いてありました。「雪の中でも見つけやすいように、赤いマフラーをおまもりに」。
うさぎさんはびっくりしました。
「あら、わたし、ちょうどマフラーを編んでいたところなの。だれが分かったのかしら」
りすはにっこり笑いました。
「ないしょです。お手紙には、送り主の名前がありません」
こぎつねの手紙
最後に、りすは森のはずれの小さな巣にたどりつきました。そこには一人ぼっちのこぎつねが住んでいて、お母さんを早くに亡くして、一人で冬をむかえるのです。りすは手紙を郵便受けに入れました。
きみは、ひとりじゃないよ。春になったら、みんなで遊ぼう。それまで、ゆっくり眠ってね。
こぎつねは手紙をぎゅっと胸に抱きました。巣の外では、ちらちらと雪が降り始めました。
手紙を書いたひと
りすは配達を終えた帰り道、ふと思いました。
「この手紙、だれが書いたんだろう」
手紙は毎年、りすの郵便受けに入っていましたが、差出人の名前はありません。ただひとつ、知っていることがありました。手紙の紙のすみに、小さな押し花がはさんであるのです。それは森のいちばん奥にしか咲かない、白い花でした。
りすは空を見上げました。雪が森を包んでいきます。きっと、森そのものがみんなに手紙を書いているのかもしれません。その夜、りすはあたたかい巣の中でぐっすり眠りました。夢の中で、白い花が一輪、ふわりと咲いていました。
おしまい
